「よ、よろけて倒れこんだだけでは?」
「それにしては・・・・茜ちゃんも芹ちゃんも長々密着してないですかね?・・・あっ」
「っ・・・」
二度目の衝撃。
彼女の頬に手を伸ばした彼が困ったような笑みを浮かべ、直後身をかがめて顔を寄せる。
ただわずかな希望を言えばこちらが捉えられたのは芹さんの斜め後ろからの姿とその顔の至近距離に寄った彼のそれ。
「・・・・・・・・・キスしてない?」
「・・・・・・・・・・そう見えるだけでは」
「即答できない千麻ちゃんの言葉って説得力ないよね」
「すみません・・・・」
突っ込まれた内容に否定を返せずに謝罪を口にする。
それでも取り急ぎ頭に浮かんだ【言い訳】を現状打破の糸口であるかのように口にした。
「し、してないですよ!だってこんな公衆の面前・・・・」
「・・・・・公衆の・・・面前?・・・それが?」
「・・・・・・すみません。大道寺の男性にはその項目は皆無だと忘れてました」
結果、説得力皆無だった私の思い付き。
そしてもう顔の距離こそは離れているけれど何だか複雑な微笑みの2人を捉える。
いや、だって・・・まさかでしょ。
そう自分の言い聞かすのに徐々に早くなる心臓は正直かもしれない。
隣に立つ雛華さんも自分の不安に証拠を得たように深く重いため息をついて、その負の感情がこちらにも空気感染で移って発症。
そんな時ほど望まぬ事態は起きるものだ。
ようやく動きを見せた2人。
だけども衝撃の連続が継続の今。
歩きだした彼らの距離は友情的な距離感を超えている。
芹さんと並び肩を抱くように回された彼の手が優しくさすって背中にも回る。
芹さんもそれを受け入れどこか彼に身を預けるように歩いていて、どっから見ても親密な恋人同士の2人だ。
そしてそれの様子に声を発することも忘れ呆然とする溢れ者な私達。
それでも先に動きを見せた雛華さんが歩き出し、予想外にも私も同じ方向に体が動く。
気がつけば雛華さんに捕まれていた腕。
だけども振りほどく意思もなく、さっきまでの呆れもなく徐々に自分の意思で歩き出す足。
だって・・・・さすがに疑惑。
もうすぐ勤務時間なのに・・・・何をしているの?ダーリン。



