「仰る通り、私は彼に好意を抱いてます。だけどもその感情が焦るほどの事態でもないと判断し帰社を促しているのですが?」
「あ・・うん、なんか・・・・ちょっと驚いた。・・・感動もしてるんだけどさ・・・・・・・・。でも、分かんないじゃん。今まさに『やっぱり好き』とか『結婚したの後悔してる』とか会話してたらどうするの?!」
「・・・・・言うは自己責任の範疇なので。それに根拠のない予測や憶測で2人を断罪は出来ませんから」
現状では興味の範疇外であると踵を返し歩き出す。
久しぶりに会って楽しくランチしている姿にいちいち反応して騒ぎ立てるのは野暮で自分が惨めなだけだ。
実際、取り立てて憤る程胸もざわついていない。
まぁ、多少・・・楽しげに笑う彼に微々たる苛立ちは隠せないけど。
そうして一人不満な雛華さんを残し歩き始めて数歩。
不意に後ろから腕を掴まれ振り返ったのに、その体は振り返った方向ではなくむしろ前進していた方に引かれすぐに建物の陰に引き込まれた。
当然連れ込んだのは雛華さんで、驚きと不満を告げようと口を開いた私に『しっ』と指たて沈黙を示す。
それに従い口を閉ざせばチラリと様子を伺うようにさっきの道を覗き込んだ雛華さん。
何事だ?と同じように警戒して覗き込めばどうやら楽しい会食を終えたらしい2人が店の外に出てくるところだった。
そして何やら向かい合っての歓談。
しばらく後に彼女が彼に頭を下げて微笑んでいる。
馬鹿らしい。
ただ楽しい食事をして彼女がお礼を告げる別れ際に過ぎない。
もういいだろう?と視線を雛華さんに戻した瞬間。
「あっ・・・・」
ようやく響いた雛華さんの声に驚きや動揺をしっかり感じ、それを確かめるように自分の視線も2人に戻した。
「あっ、」
一体・・・私が目をそらした一瞬にどんな急展開が起こったんだ?
ドラマで言う処の決定的シーンを見逃した気分だ。
雛華さんの声で視線を戻した先にはさっきまで予想もしなかったシーンに切り替わっていて。
向かい合って立っていた芹さんが彼の胸元に額を寄せて寄りかかり、その芹さんを拒絶するでもなく肩に手を置く彼の姿。
一瞬さまざまな予測をフルで何パターンも頭に起こし、一番近いであろう模範解答を口にしてみた。



