「・・・・何か問題でも?私でもある程度の事はお答えできるかと、」
「あっ、いや・・・頼まれてた仕事は問題ないよ」
言いながら小脇に抱えていたA4サイズの茶封筒を私に差し出した姿が、それでも私でない姿を探して視線を部屋に走らせた。
それを確かめるように私も振り返り、もちろん理解している彼の不在を口にした。
「・・・副社長なら外出中ですが」
「フッ・・・・副社長?」
「勤務中ですから」
「相変わらず真面目だね千麻ちゃん」
「彼に用であったのなら芹さんに連絡されたらよかったのに、先刻彼女との約束に出向いたばかりですから」
聞いているでしょう?
それが当然だと思って切り返せば、捉えた彼は驚愕と落胆を同時に見せた気がする。
サングラスで分かりにくくはあったけど。
「そっか・・・・・やっぱり・・・、芹ちゃん茜ちゃんのところに来てたんだ・・・・」
「・・・・・はい、昨夜彼に電話で、」
「電話も・・・・・」
「・・・・・・・・・・・もしかしてですが、」
なんだかこっちの解釈とは相反する雛華さんの反応に眉根を寄せる。
どうも噛み合っていない今の時間の会話。
まさかこの2人に至って、と思いつつ確認の声を落胆している雛華さんに向けていく。
「今日の芹さんと彼の逢瀬を聞かされてなかったのですか?」
あっ、また私はオブラードなしに。
多分的中でしかも落胆した彼には酷く痛いであろう言葉を口にすると、しばらく耐えるように不動になる姿。
沈黙にこちらまで気まずい痛みを感じ始めた瞬間。
「っ・・・」
何事?
と、思ったのはきつく彼に抱きしめられた直後。
ああ、もう、ファンデーションで汚れないだろうか。
そんな心配が走ったタイミングに耳に入り込んだ彼の声。
しかもかなり近くから。
「千麻ちゃぁん・・・・」
「・・・・雛華さん・・・・・・・、声が涙声・・・なのは・・・気のせいだと言ってほしいです・・・・」
「ぐすん・・・俺、芹ちゃんに嫌われちゃったかもぉ・・・・」
「ああ、気のせいじゃないのですね・・・・・」
確実にサングラスの下は涙目なのだと理解すると行き過ぎた抱擁に動揺するでもなく宥めるように彼の背中を摩って慰めた。



