悔しい・・・。
そう思って眉根寄せる私でもあなたは『可愛い』と仰りたいのでしょうね。
いや、もう言っている。
表情すべてで心底『可愛い』と伝えてくる姿に悔しくも自分の頬が紅潮している気がする。
「・・・・・・自意識過剰・・・いえ、被害妄想」
「ん~?どれがどう?」
「私があなたの心情までいちいち意識して過ごしている自意識過剰と、過去にあなたを傷つける行為を繰り返し反省してないと告げた被害妄想・・・」
「うん、可愛い」
「っ・・・、もう行け!!」
「あはははは、らしくないキレ方したぁ。面白い!!超可愛いし!!」
どうあっても私を追い詰める姿勢の彼に今ばかりは勝機が見えないと、半ば強引に戦争に終止符。
ある意味降参にも近い形で彼の喜ぶような断ち切り方をしてしまった。
これが世に言う・・・・・惚れた弱みか?
うわっ、認めたくない。
「もし悪魔がいるなら・・・」
「ん?千麻ちゃん壊れた?」
「魂全部売り渡すから私から恋愛感情生まれる根本を消し去ってほしい」
「ねぇ、本気で思いつめた顔でそれ言われるとさすがに切ないよ?そんなに俺を好きな自分を認めたくないんですか?」
今の自分が不満であるかのように落胆して現実的でない言葉を告げればさすがに彼の表情も満面の笑みから切り替わる。
苦笑いに。
ああ、こうして結局不本意な夫婦漫才と化す。
それこそこれは始まりから健在な私達の姿だと再確認。
そしてようやく時間の概念が頭に浮上し、促すように彼の胸をおして距離を取った。
「・・・・・副社長、【元】婚約者様とお食事の時間では?」
「それは小さな仕返しかなハニー?それなら可愛く受け流せるけど」
「・・・・・妻に宣言の白昼堂々の浮気デートとでも名打ちましょうか?」
「・・・・・・・・可愛いヤキモチだって都合のいい解釈して出かけてきます」
「さっさといってらっしゃいませ」
腕を組んでの横柄な見送り姿勢から片手だけ崩して『しっしっ』と手を振る可愛らしさ皆無の私。
さすがにムッと表情を崩すかと思ったのに、方眉だけ僅かに下げた彼が小さく笑いその弧を描いた唇を私の頬に押し当て離れた。
「愛してるのは君だけだよハニー」
「どこの映画の臭いセリフですか?そしてそう言う男ほど他の女の影匂わせてると気がつきませんか?」
「・・・・あ、本当だ」
「馬鹿・・・・」
「じゃあ、シンプルに・・・、愛してるよハニー」
「勤務時間守って帰ってきてくだされば何でもいいです」
「・・・・『私もダーリン』って翻訳しとく」
また都合のいい。
まぁ、あながち間違いじゃないって事にしておいてあげるわよ。



