それなりの牽制きかせた朝の時間を後に昼近くまでは当たり前の時間を刻む。
どんなに家で子供っぽい姿を晒しても会社に一歩踏み込めば上司で大人。
愛嬌とばかりにエレベーターでは相変わらずじゃれついてくるけれど、受け入れも拒絶もせずに上下に移動する動きに身をまかす。
それが平常。
この関係を始めた3か月ほど前とはだいぶ変化した【平常】だと、ふとした瞬間に思うほどに。
そしてその時に浮上する不安を大きくなる前に掻き消して【成行き】に置き換える。
でも・・・・、あの賭けが【勝ち】という結果を生み出したら・・・。
もう答えの選択は限られてくる。
逆に・・・・・不安も掻き消し決意するきっかけになるのだろうか?
デスクで規則的にキーボードの音を響かせていたけれど、一節息を入れた瞬間に何気なく捉えたカレンダーの日付。
そして無意識に腹部に触れた指先。
そんなタイミングに耳に入り込んだ音と気配で彼の方のデスクを振り返り、立ち上がった姿がデスクの上を片付け始めたので時間を理解。
ああ、もうランチタイム。
彼と彼女の久々のデートタイムかと、嫌味でなく頭で思って席を立つ。
ハンガーにかけられている上着を手に彼に近づくと背後に回り、袖を通しやすいように広げて羽織らせる。
「千麻ちゃんは今日は何食べるの?」
「・・・そうですね、今打ってる書類を片付けてしまいたいので・・・・・引き出しの中の簡易バランス栄養食でも・・・」
「却下」
「はっ?」
「これは上司としての命令です。ただでさえそんなに細っこいんだからしっかり食事は食べましょう」
「なんて横暴で私的な命令・・・・、【社員】の食生活まで縛れる権限は副社長の肩書に無かったと思いますが?」
都合よく上司を持ち出し上から目線の言い分に、腕を組んで淡々と異を唱える。
別に反抗したいわけでなく、彼の姿勢の問題。
それを非難して挑んでみれば上着をしっかり着衣した彼がスッと私に向き直り同じように腕を組んで見下ろす。
「訂正・・・」
「はい、」
「なら、奥さんを心配する夫として【お願い】、」
「・・・・・」
「その有能で勤勉なところは魅力の一つだけど・・・、心配だからちゃんと食べて」
「・・・・【お願い】ですか?」
「【お願い】です。・・・・・【もしかしたら】な可能性もあるでしょう?」
そう告げた彼の視線がちらりと私の腹部に走ったのを見逃さない。
【もしかしたら】の懸念の対象。
当然それを理解しているからそこは彼に同調し頷くしかこの場合は答えはない。



