でも、それを口にしないのは、
一に、彼に悪意や含みがない事。
二に、会うのがランチタイムだという事。
三に、彼女には相思相愛の新婚ほやほやの雛華さんという旦那様がいる事。
四に、・・・・・・私のキャラじゃないし、突っ込んだら変に歓喜してしつこく意地の悪い絡み方をしてくるだろう。
結局は一番四の条件が頭に強く、絶対に避けたいと判断すると小さく頷いた。
「分かりました、了承です。新婚ほやほやな彼女にセクハラ的なからかいをなさって訴えられませんように」
食べ終わった食器を手に席を立つ。
それさえ守ればあとはご自由に。と、興味なさげにキッチンに回り始めると『え〜』耳にはいるどこか試す様な響き。
反応したら思う壺だと理解しつつ、チラリと視線だけ走らせれば予想通りの含み笑い。
カウンターに両肘ついての頬杖で、キッチン側から対面して立った私ににっこり微笑む。
それを見て見ぬふりの知らぬふり。
関係ないと勢いよく水を流したのにそんな事で引く男でもない。
「ねぇ、ここはやっぱりさ、信頼厚い俺でしょうけど微々たるヤキモチも受けて見たいなぁハニー」
「馬鹿な事を。大丈夫です、どう貴方が口説いても雛華さん以上にはなり得ませんから」
「・・・それは俺がヤキモチ焼くセリフ」
そう告げムスッと眉根を寄せた彼に溜め息。
激しく音を立てていた水道をキュッと止めると、腰に手を当て真っ直ぐ見つめる。
「じゃあ、貴方の理想は何ですか?」
「そこは・・・、『浮気したらダメ』とか涙目で『寂しい』とか可愛らしくーー」
「・・・浮気したら涙目で【恭司】に寂しいつて縋りますから」
「ツンデレ通り越して悪意を感じるけど、」
「私なりのアレンジきかせたんですが?」
「ええ、ええ、強烈すぎて意地でも間違ってもしないでしょうよ」
しれっと彼の鬼門である恭司を引用。
当然の事ながらその名前の響きに眉をひそめ、もっといえばあの匂いを思い出したのか何もない空間を仰ぐ。
それを捉えて思わずクスリと響かせる。
「大丈夫。泣き寝入りする様な可愛らしさは元々持ち合わせておりませんから」
「じゃあ、俺が浮気したらどうするの?」
「・・・浮気願望がおありで?」
「違う!今の俺には1も2も・・・、
考える事なく千麻ちゃんしか女の子に見えません!」
ああ、そんな頬赤らめて。
浮気するとかしないとか、架空の話で熱く愛情見せないでよダーリン。
勢いではじき出した言葉に即座に否定。
比べる対象無しに私が一番なのだと告げた彼はほのかに紅潮して目は真剣だ。



