良いのか悪いのか・・・・、私は気がついた感情に従順に成りつつあるんだな。
たとえ相手が5年間もストレス溜めながら奉仕した我儘な年下上司様でも。
一瞬現状の自分を受け入れるように目蓋を閉じ彼の抱擁に静かに身を預ける。
でもすぐに【らしさ】の回復。
スッと自分の腕を彼の胸に添え押し離すと僅かに驚いた表情の彼を無表情で見つめ上げ。
「・・・・・寝ましょう。明日も仕事です」
「ふはっ、てっきり『3回戦は?』とか言われるかと思った」
「・・・・・・歯の浮くセリフで萎えました」
「ちょっ・・・酷っ!!」
「おやすみダーリン」
「ちょっとぉぉ!!結構傷ついたけどぉ!?千麻ちゃん!?」
知ったこっちゃない。
そんな風に、ショックだと騒ぎ立てる彼に背中を向けてベッドに潜り込んで顔の半分まで布団を引き上げた。
隠された口元が笑っていたのは当然。
私がそう生易しくないのはさすがに理解している彼が不満げに何かをボヤキながら同じように布団に潜り込んで背中合わせに不動になった。
あら、これは・・・いじけた意思表示。
男女としても徐々に理解してくるお互いの反応や仕草でそれを悟ると仕方がないと小さく笑い、モゾリと方向を変えて彼の背中から腕を回して存在アピール。
あとは・・・。
「この賭けに【楽しみ】が無いわけじゃないのよ。・・・ダーリン」
「・・・・・・・また、・・・その間狡い・・」
これは重大な補足だと付け足して、葛藤の中に不安だけではないと告げると彼のもどかしそうな声の動揺。
きっと・・・今本当は振り返って抱きしめたいくらい心が騒いでるでしょ?
でもそれをしないのは小さなプライド。
それを知ってるからあえて意地悪のように受け流す。
「・・・・・・おやすみなさい」
「・・・・おやすみ千麻ちゃん」
不安が消えたわけではないけれど、とりあえずあなたが言ったように愛されることで誤魔化されておくわダーリン。
そして安眠効果ばっちりの彼の『おやすみ』の声で眠りの中に見事誘われ意識を手放した。
でも・・・意識を手放す直前に僅かに浮上した記憶がある。
ああ、芹さんからの電話の内容を聞き忘れた。
まぁ・・・・いいか。
嵐の前の静けさと言える夜。



