ふわりと抱きしめてきた彼のぬくもりを感じた瞬間、言い様のない感情が一気に溢れてきて思わず唇をギュッと噛みしめた。
多分その身も縮こませるように下を向いたのかもしれない。
違和感を察知したらしい彼が苦笑いの無防備で覗き込みそして・・・・絶句。
驚愕の表情で。
「・・・・」
「・・・・」
「どうしたの?・・・・・・頭でも撫でようか?」
「セクハラ・・・」
「だって・・えっ?・・・・・槍でも降ってくる?」
「失礼・・・・」
彼も酷く動揺しているのが分かる、きょろきょろと意味も無く周りを見渡しそわそわとしてから再度私を見降ろし眉尻を下げる。
ああ、すみません。
コレは完全に私のミス。
でもでも・・・・、
「悔しいぃぃ・・・・」
収まりのつかない感情を言葉にして落とせば、すでに溢れていた涙がボロボロと頬を伝って落ちる。
それを手で拭いながら下を向くと、どうしていいのか分からない彼がおどおどと肩に手を伸ばしながら覗きこんできた。
「ちょっ、・・どうしたの?何で泣いて・・・」
「だって・・・、悔し・・・・」
「・・・俺の指輪?」
「ちがっ・・・、あの人達・・・なに・・何も知らないのに・・・、副社長や・・・彼女の事馬鹿に・・・っ・・・」
ああ、そうか・・・、
私は本当に悔しかったんだな。
自分が貶されても流せたのに、自分が認めた姿が好き勝手に悪態疲れる事が悔しくて仕方なかったんだ。
そうしてその感情を爆発させれば、さっきの啖呵では言い切れない程大きく溢れてしまって。
もうぶつけどころのない感情はこうして涙としてでしか消化できないんだ。
みっともない。
つまらない不満を口にして、子供の様に大粒の涙を流して目の前の人を困らせている。
勤務中に。
なんて失態ーーーーーーー。
「・・っ・・・・」
デジャブ?
違う、さっきより強くきつく。
香りもぬくもりも感じてしまった。
ああ、上質なスーツなのに・・・ファンデーションがついてしまいますよ?
「・・・・・反則だなぁ・・千麻ちゃん」
「・・・スーツ・・よごーー」
「いいよ。・・・・今は、千麻ちゃんを抱きしめたい」
「・・・・セクハラ」
「訴えてもいいよ。・・・・・慰謝料なんて安い物だよ」
「副社ちょーーー」
「自分より俺の事で怒ってくれる千麻ちゃんは
最高の秘書で奥さんだよね」
狡い・・・。
あえて、『秘書』という言葉を先に持ちだすなんて。
私がそっちの方が感極まると知っていての含みある一言なんでしょう?
だから・・・一瞬。
そう一瞬強く跳ねた心臓は反則としてカウントしませんから。



