夫婦ですが何か?




でもね・・・・、あなたが言ったことじゃない。


理屈を並べればグダグダと悩んで、なんて危険で馬鹿な賭けだと跳ねつけるだろう。


でも、



「・・・・・・・成行きですよ」


「・・・・・」



言って口の端を小さく上げて、力を抜くように体重を後ろに逃して防波堤に手をついた。


ゆっくりと視線で自分の腹部を捉え、追って指先でもその部分を触れる。


いつかそこに今語った夢が宿るかもしれないと。


そして絶対に予想にもしなかった事だとクスリと笑うと、ゆっくり視線を彼に戻していく。


私の言動行動を一瞬でも見逃さないとまっすぐに見つめていた彼がこの後の言葉も逃さないと視線を動かさず。


それに応えるように自分の声を空気に乗せた。



「もし・・・・今語ったような夢が私の体に起こるのなら、・・・・必然で運命だったのだと受け入れます」


「・・・運命論なんて信じてなかったくせに?」


「・・・・じゃあ・・・やっぱり成行きで」



成行きでここまできた私達だもの。


一生抱くことのないと思っていた感情ですら成行きで生まれて。


それに身を任せて2人で並ぶのも私達らしいのでしょう。




「それに・・・結果が先の過程の後付は・・・お互いに得意じゃないですか?」



言って左手の薬指の指輪を彼に向ける。


型破りな結婚から始めて、本来それより先に進めるべき時間を今辿っている。


そんな私達だから・・・出来うる賭けでもあるでしょう?


含んで『ねっ?』と首を傾げると、ようやく小さく数回頷いた彼がゆっくりとその目を閉じた。


伏せた目蓋の先の睫毛が長くて、それすらも色素が薄くて綺麗だと思う。


元を辿ればこの綺麗なグリーンはどこからなんだろう?と果てしない事を考えた一瞬。


スッと目蓋が開き、宝石のようなグリーンが真面目な表情で私を見つめた。



「・・・・・・一つ・・・条件がある」


「条件?」



真面目な顔と声音。


とても重要だ。と言いたげな申し出に疑問の響きで切り返せば、



「賭けに勝ったら・・・・・・・名前は俺がつける」


「・・・・・はっ?」


「千麻ちゃんのネーミングセンスだけは賞賛に値しないって学んだばっかだからね」



言い切って浮かんだのは意地の悪い、私を常に振り回してきた男の悪戯な笑み。


ムカつく。


それが私が抱くべき正解の感情だ。


いつだって、これからだって、そう思って私は彼の我儘に振り回され傍にいるのだろう。


そうあってほしいのが・・・・・私の夢。


夫婦であっても、上司と秘書であっても。





ねぇ、それは・・・・今見る夢より大きくて・・・、


実現可能な夢なのかしら?


それこそ・・・・予測不能な確率。






成行きの果てよね・・・・ダーリン。