「・・・・・千麻ちゃん」
不意に風と一緒に入り込んだ彼の声に視線だけ走らせ反応すると、声をかけたくせにその視線を未だ海に向けている彼をその目に捉えた。
その視線がこちらにない事に多少不満を感じつつも、横顔がえらく綺麗に映って見えたから帳消しにした。
そして特別自分の視線を求められてないと判断するとゆっくり自分の目にも彼が捉えている海を映し始める。
「・・・・・・・ちょっとした、バカップルごっこがしたいんですが」
穏やかな気持ちで海に意識を戻したというのに、一変、彼の一言に双眸見開いて怪訝な表情で再度彼を捉えなおせば。
今度はその彼の美徳と言えるグリーンアイが悪戯に笑って私を映した。
ああ、今度は何のお遊びだろうか?とうんざりした感情で息を吐く。
「今度はなんですか?バカップルらしく水かけごっこでも?」
「ああ、それもセオリーだね」
「ご希望なら今すぐ背中を押して差し上げますが?」
「それさぁ・・・水かけじゃないよね。一歩間違えれば殺人だよね?」
手を構えて『押してやろうか?』と表示すれば、すかさずその手首を掴んだ彼が軽く必死の苦笑いを私に返す。
ああ、すでにこのやり取りがバカップル通り越して夫婦漫才なのに。
自分で気がついた事実に呆れ、スッとその手を引くとようやく安堵したらしい彼もパッとその手を広げて解放。
結局本題は何だ?と問うように見つめれば、一瞬視線泳がせた彼が躊躇いながらもゆっくり私に戻してくる。
そして本題。
「夢の話がしたいんです」
「・・・・・眠いんですか?」
「そうじゃなくて・・・・、ねぇ、少し言葉遊び不在で会話しない?」
困ったような微笑み。
わかるでしょ?
そんな含みに答えを示せばYES。
彼の言う夢が睡眠から寄るそれでない事くらいは十分に理解していて、つい数時間前の話にも通じる。
【期待】ではなく、【夢】。
その夢の話だろう。
つまりは私と【夢】として今未来を語ってみたいという事なんだろう。
それも誤魔化し半分な言葉遊び抜きで。
そう理解するとふぅっと気合を入れるわけではないけれど息を吐いて彼に体ごと向いてみる。
「で?・・・どんな夢を語りたいのダーリン」
そう切り出せばにっこりと満足そうに微笑み私と同じように体を向けて対峙した。



