呆れてしまうほどの彼のヤキモチに話にならないと顔を背ける。
そうしてお互いに不愉快な感情で明後日の方向を見つめ、この空気に似合うような少し冷たい潮風が2人を抜けていった。
耳に入り込むのも風の音と波の音で、こんな感情でなかったらヒーリング効果ありそうなそれなのにとどこかで思う。
それでもさすがに長くとどまっていた体が吹き抜ける風の冷たさに不満を現わしてくる。
指先が冷たい。
そう思って少しでも暖を取ろうと両手を重ねるべく、コンクリートの防波堤についていた手を持ち上げかけた瞬間。
上に浮上した私の手とは逆に下に下がってきた彼の手がすれ違うように掠めて、それに反応して振り返れば同じように反応した彼と視線が絡んだ。
結果、お互いに中途半端な位置と高さで不動になっている手。
そしてきょとんとしたお互いの表情。
「・・・・・何でしょう?」
「いや、・・・手が寒いなって」
「同感です」
「うん」
「・・・」
「・・・」
そんな流れの終着は彼の手が躊躇いがちに私の手に絡んで握る事でついた。
何の事はない。
私と彼はほぼ同時に寒さに暖を取ろうとしただけ。
その方法が少し相違。
私は自分の手で、彼は私の手で。
ただそれだけの事。
そして結果彼が望んだ方法で暖を得ることになったのだ。
もっと簡単に言えば・・・。
気まずい空気の緩和。
仲直りして触れ合いたかっただけの話。
彼なりの不器用な仲直りの提示なのだ。
それを理解しているから黙ってそれを受け入れることで同意。
私達はいつだってそうやって触れ合う事で解決していると思う。
悲しいかな口を開けば皮肉な言葉遊びで遠回りにしか本心を語れない。
それでも触れ合う肌だけはいつだって素直だから。
私達には触れ合うことが素直になれる意思表示の方法だと思う。
仲のいい子供が手を繋ぐようにお互いの手をしっかり握って、お互いにその目に海を映す。
しばらく沈黙が続いて、それでも気まずさや焦りはない。
無理して会話を持ち込もうとかそんな必要はなくて。
ただ・・・・・一緒に、隣にいるという事が重要。
そう感じた。
先は分からないけれど・・・。
今はこうしてしっかりと彼の隣にいる。
お互いの左手に証を立て。
私は彼の妻で、彼は私の夫で、
不格好で不完全で綻びだらけだけども・・・、
夫婦なんだ・・・・私と彼は。



