「千麻ちゃん?本当になんか・・・大丈夫?」
多分あまりにも私が平常時から逸脱していたのだろう、その声に本気の不安交えた彼の眉尻は下がっている。
その声に反応して晴天を映していた目を彼に下ろして、再確認するように目を細め見つめ第一印象。
いや、印象というより感情?
「・・・・・欲情・・・」
「はっ!?」
「なんか・・・・青い空見て・・・あなたを見たら、・・・・欲情しました」
「何で!?ごめん・・・全然微塵も理解できない・・・」
理解不能だと出来うる限りその目を見開いた彼の驚愕ぶりにクスクスと笑うと踵を返す。
未だ困惑している彼をよそにバイクの後ろに跨ると呆然としている彼を振り返って自分の前の位置をポンポンと示した。
「・・・・行きましょう」
「えっ?」
「連れてってください」
「・・・・・えと、・・・ラブホ?」
「うわっ、初デートでしかもこんな初っ端からホテルに連れ込もうとか思ってるんですか?性欲丸出しな最低なプランですね」
「なっ、だって・・・欲情したとか言うから!!」
彼の言葉に嫌悪したように表情歪めての『最低』発言をすれば、さすがにムッとして反論した彼が、訳が分からない!と頭を掻きながらバイクに近づいた。
そんな彼にメットを渡すと不貞腐れながら受け取り装着し私の示したシートに跨る。
「で?どこに行きたいの?」
「言ったじゃないですか。・・・・海沿いを走りたいって」
少し不機嫌の継続。
そんな彼の口調の問いかけにあえて楽しげに切り返せば、一瞬私を振り返った彼がすぐに照れくさそうに前を向いた。
そしてグッとエンジンをかける彼の後ろで持っていたウサギをはみ出しながらも鞄に詰め込み彼の体に腕を回す。
心地よいエンジンの振動を感じ、直後にゆっくりと体を抜ける風に口の端を上げた。
平日の町中は車通りが少ない。
それを実証するように走り抜けるバイクも交通ルールには従わざるを得ない。
ゆっくり止まった動きと風に視線走らせて捉える赤信号。
止まっているにも関わらずその体を密着させ馴染んだ香りに浸っていたけれど。
ああ、少し・・・意地悪をしたい。
そんな感情の浮上で口の端を上げ、なるべく聞き取りやすいように彼の頭に頭を近づける。
「ねぇ、」
「・・・何?」
エンジン音に負けじと少し声を張ると、どうやらまだ不貞腐れているらしい彼の返事が返された。
それにも満足して聞こえない程度に小さく笑うと意地悪の開始。



