もしそうならなんて面倒で子供な男なんだ。
そう思いながら眉根を寄せて再度騒音に身を投じようとすれば、タイミングよく開いた自動ドアの向こうからその姿を見せたのは幸いにも彼だ。
『おっと』とお互いにぶつかりそうだった体を僅かに引くと、腕を組んでムッとしながら彼を睨み上げる。
「遅い」
「自分が置き去りにしたんじゃん。今日記憶する数時間で2度目だよ?知ってた?」
「・・・・・置き去りにされる隙を作ったあなたが悪い」
「うわぁ、反省なし?折角千麻ちゃんの為に頑張ってたのに」
「はっ?」
っと、声を響かせた瞬間にはもう頭にポンと何かを乗せられて、慌てて手を伸ばしそれに触れると手触りのいい感触を指先に得た。
凡そ予想はついたそれを視界に入る位置に下ろしてみると、結構大きな抱きがいのある黒いウサギのぬいぐるみ。
そういえば・・・出てきたときに後ろ手に何か隠してたな。と今更思い出して今詳細を知った。
「可愛くない?【ぴょん吉】にそっくりでしょ?」
「・・・すみません。嫌味ですか?」
軽く噴き出しながら【ぴょん吉】と言った彼に睨みつけると『ごめん』と心からでない謝罪が返され。
それにも不満を感じつつ手の中の黒いウサギを見つめてしまう。
まぁ、確かに・・・・可愛いですけど。
「UFOキャッチャーですか?」
「うん、驚いてよ!なんと奇跡の一回で取ったし俺」
「えっ、それは凄い!」
「でしょ~、結構得意なんだよね俺」
そう言って無邪気にピースサインをかましてくる姿は本当に会社での姿は皆無に思う。
そして些細なこの瞬間にまた一つ微々たる彼の一部を知るんだ。
彼はUFOキャッチャーが得意。
覚えていたところで意味もなく何の役にも立ちはしないのに・・・。
馬鹿みたいだ。
少し・・・嬉しいと思ってる自分がいる。
いや・・・、
かなり?
「・・・・千麻ちゃん?」
驚いたように私を覗き込んできた彼が僅かに紅潮して、何でだろうと?と思った拍子に自分の頬の筋肉に違和感。
あっ・・・・なるほど。
私が・・・・笑ってたのか。
「フフッ・・・・これ・・・バイクでどうやって持って帰るんですか?」
「・・・あっ・・・考えてなかった」
「相変わらず・・・肝心なところが抜けてますね」
「千麻ちゃん喜ばすことしか考えてなかったや・・・、どうしよう?」
またそうやって・・・・、当たり前のようにさらりと言ってのける。
何の含みもなく私を喜ばしたいって反応見せられると逆にその言葉の威力が増してしまうのに。



