「・・・・・えと・・・ごめん、分かんない」
「・・・何がですか?」
「【好き】って・・・・言ったよね?」
「・・・・・・茜が好き。・・・そう言いました」
「っーーーーーーえっ・・えあっ・・な、だって・・えっ?」
ねぇ、
笑っていいのかしら困っていいのかしら?
見事なまでの赤面と慌てっぷりでご自慢のカッコ良さが半減どころじゃないわよダーリン。
一人ワタワタと動揺して視線をいたるところに動かす彼を冷静に見つめる。
いつになったらまともな言葉を口に出来るのかとウィッグの髪を指先に絡め始めたタイミングに、ようやく口元押さえて状況を把握してきたらしい彼がゆっくり私と視線を絡めた。
でもまだ顔は赤い。
「・・・・・・えっ・・何?千麻ちゃん・・・俺のこと好きなの?」
「・・・・・あなたはそんなに理解力ない人であったでしょうか?私は何度も同じことを言わされるのが好きじゃないのですが?」
さすがにしつこいと眉根を寄せるとどうやら確信を得たらしい彼の目に期待が揺らぎ、それでもより明確に意識したいと再度の要求。
ピッと人差し指立て私に恐る恐る示して見せると補足のように声を響かせた。
「じゃ、じゃあ・・最後に・・・1回」
「・・・・・・茜が好き・・・・・・」
3回目になれば溜め息交じりの呆れた響きであったのに、彼には溜め息も呆れも感じられなかったらしい。
歓喜に満ちた表情を見たのは一瞬。
直後に痛い程きつく抱きしめられいつもの匂いに包まれ閉じ込められた。
密着する体で分かる。
心臓があり得ない程速いわよ?
彼の肩を抱きしめられながら見つめていれば私の肩に頭を預け顔を埋めて不動だった彼がようやく微々たる反応を示す。
「・・・・・・千麻ちゃぁん・・・」
「・・・はい、」
「今日・・・・お赤飯買っていこう・・・」
「・・・・・・私・・あの中の豆あんまり好きじゃないです」
「じゃあ、俺が食べるから」
「・・・・・何の祝いだか、」
呆れて溜め息をつけば何故かギュッと抱きしめられ更に密度が増す。
つくづく可笑しな2人だと思う。
法律上正式な夫婦だというのに次から次へと後付で夫婦になるまでの過程を今更辿っている気がする。
さしずめ今は結婚なんて程遠い、『好き』なんて言葉だけで一喜一憂するくらいの2人。
なのに・・・・夫婦なのだ。



