黙って従えと言わんばかりに勝ち誇ったグリーンアイが悪戯に笑う。
あまりの屁理屈な言い分の説得に唖然の後脱力。
「・・・仕事だから・・・・耐えろって・・・・どんだけパワハラ・・・・・」
よろりよろけながら片手で頭を抱えると、耳に入り込む腹が立つほど楽しげな彼の笑い声。
「ははっ、俺の我儘なお仕事こなすのお得意でしょ?有能な千麻ちゃんなら大丈夫、私的な感情に呑まれず見事契約をやり切るでしょうよ」
ああ、嫌味だ。
私なら出来るだろう?と挑発めいた言葉で嫌味を飛ばす。
私が性格上『無理だ』と言わないと理解している彼の罠。
それもこれも悲しいかな5年間で得た関係のなせる業。
だからこそきつく睨み上げて不満を示すのにこの意地の悪い暴君な上司様の時には絶対に通用しないのだ。
そして私が出来ることはただ一つ。・・・いや、二つ。
「はぁ・・・」
まずは溜め息、
「いつか・・・・・精神的苦痛で訴えてやる」
悪態。
そうすれば結論は勝手に彼が解釈するのだ。
きっと今もいつも通り勝ち誇ったようにそれを口にするのだと思った。
だから不貞腐れてそれに構えて腕を組み明後日の方向を見つめていた私だったのに、耳に入り込んだのは予想外の言葉。
「・・・・・・一つ・・・千麻ちゃんの発言に異を唱えれば、」
「・・・はっ?」
「・・・・・期待・・・とは、少し違う」
言われた【期待】に自分の言葉を回想する。
そしてその言葉に思い当ると視線を彼に戻した。
その口元は弧を描いてはいるけれど、さっきみたいな意地の悪さは皆無でどこか穏やかな笑みに感じた。
だからこそ不機嫌の意思表示をゆるく解いて見つめ返すと、言葉の続きが柔らかく返された。
「【期待】は・・・相手にも押し付ける物だから。・・・・俺が描くのは・・・・夢」
「・・・・・・夢?」
「うん、それこそ・・・子供が戦隊ヒーローになる!とか、叶わない程の夢に近くても。
俺は・・・・一生千麻ちゃんと夫婦でいたいな。っていう夢を描いているってだけの話」
「・・・・・・・・」
「夢だよ?・・・・・だから、別に千麻ちゃんはそれに応えようとしたり応えられないって焦る必要はなくて、・・・・・・・でも、確かな現実の今くらいは楽しく過ごしたいって俺が勝手で一方的に頑張ってるだけ」
「・・・・・本当・・・屁理屈長くてもう限界です」
分かるようで分からないようで、並べられた言葉に煙に巻かれる。
確かに渦巻いていた悩みさえ馬鹿らしく感じさせるほどお得意の言葉遊びで私を翻弄する。
それが・・・・いつだって彼だ。



