もうすでに自分で語る必要もない彼の口にした仮説は事実でもある。
そこまで理解されていれば私の出した結論も納得してくれそうなものを・・・。
「・・・・・何か・・・反論したい?」
「・・・・・いえ、あっても微々たるものです。そこまでご理解頂けているのなら・・・求めるのは同意です」
「・・・・同意?」
「・・・・私に・・・愛情抱いて期待をかけるのはやめてください」
「・・・・」
「楽しい夫婦の記憶なんて不必要で無意味です。私にとって・・・この婚姻は仕事の一環で、それ以上の感情は無ーー」
「最初はねーーーー」
「っ・・・」
「・・・・・・でも、今は違うでしょ?」
「・・・・無いです」
「ねぇ、そんな下手な嘘も見抜けない俺だったら、千麻ちゃんが期待かけるほどの男じゃないでしょ?」
「・・・・上げ足・・・」
「それにさぁ、無駄で無意味なのはその必死な抵抗でしょ。これは紙の上の仕事じゃない、厄介な感情絡む人間関係の【お仕事】なんですよ千麻ちゃん」
トンと、彼の指先が私の鎖骨の真ん中あたりを突いて止まる。
その奥にある感情を示すように、それを打ち止めるように刺激された余韻がいつまでも残る。
奥に隠して密かに壊そうとしていた感情を見事に見つけられピンで押さえられた。
あとは・・・・言葉の毒で腐敗しないようにそこに焼き付けらるだけ。
「PCのデータじゃあるまいし、簡単に削除して白紙からなんてやり直せないんだよ?」
「・・・やり直します」
「絶対に無理。それこそ・・・よく考えてみなよ。絶対に無いと思ってた俺たちが結局こうして揉めるほどにお互いに依存した。
結局ね・・・やり直して予防張って意識して過ごしても、このまま楽しい記憶重ねて夫婦らしく過ごしても、過ごした成行きが理想の結果に結びつくとも限らない」
「・・・・・」
「理想と結末は必ずしも一致しない。牽制して過ごしても結果好きあうかもしれないし、楽しく過ごしても終わってしまう結末かもしれない。
だから・・・楽しいんじゃない」
「・・・・・・・楽しい?」
「行動言動一つで・・・クルクル変わる結末のこの関係が。それこそ・・・仕事と一緒だよ。辛くて苦しい?悩んでやめたい?でも・・・・・全部、千麻ちゃんが選んで始めたお仕事でしょう?」
「・・・・・・・・」
「同情でも何でも・・・俺と夫婦になるお仕事に乗ったのは千麻ちゃんだ。なら・・・辛くても苦しくても仕事を提示した俺の満足いく仕事ぶりを発揮してもらわなきゃ」
「・・・・・・屁理屈・・・」
ああ、さすがに・・・・頭がいっぱいで容量オーバーよダーリン。
あなたの持論はめちゃくちゃなのに変な説得力がある。



