「おふざけはいい加減にしてください!私は真面目な話をしていたんです」
「真面目~?ああ、あの契約夫婦論?」
ああ、あれね。
そんなつまらなそうな感じにワザとらしく忘れて思い出した反応を見せた彼が、すぐに次の撮影の音声ににっこりと笑ってポーズをとる。
さすがに今度はカメラを見ずに腕を組んで彼を睨み上げていると、不満げなグリーンアイが私を振り返って苦笑い。
「もう~、笑ってよ千麻ちゃん」
「笑えません」
「そんなに今その事話すのが重要?」
「重要です」
「じゃあ、・・・・聞くから千麻ちゃん論どうぞ」
「だから・・・私は1年契約のこの夫婦関係を本来のあるべく形に修正しようとーーー」
「その結論はさっきも聞いたよ」
「・・・・」
それじゃない。
そんな含みの言葉を弾きながら目の前の音声に反応してにこやかに撮影を続ける彼。
反して馬鹿みたいに棒立ちで横から彼を見つめて問われた言葉に押し黙ってしまうと、フッとこちらを見たグリーンアイの補足と追及。
「・・・・聞きたいのは・・・何でそう焦って出た結論を押し付けるのか。・・・正当で納得できる理由をお願いできるかな?有能な千麻ちゃん」
「・・・・・・・」
この目は・・・・知ってる。
会社での彼の目と類似する。
私が5年間信じて従ってきた目だ。
ふざけている様に見せて真面目な瞬間。
そして・・・・・・・心底狡い。
その理由をあえて求めて追及してくるところが。
説明しなくても分かっているくせに。
私を【逃げた】と言ったからには全て一致するような私の感情なんて仮説済みなんでしょう?
そしてそれこそが彼の知りたい私からの本心でもあるんだから。
浮れた音楽と音声が遠くに聞こえる。
さすがに撮影から外れた彼が答えを求めてまっすぐに射抜くように見つめてきて、それに負けじと見つめ返して息を飲む。
狡い。
逃げられない。
逃げたら・・・・それこそ・・・感情が崩壊して一気に溢れて溺れて立て直しもきかなくなる。
「・・・・千麻ちゃん、」
「・・・・・・・」
促すような言葉。
でも決して攻撃性もなければ威圧的でもない。
優しく誘導するようなそれにも関わらず押し黙る。
だってここで判断を間違ったらもっと迷走する。
彼の為にも・・・・・・。



