彼が言った通り強烈な一撃だったのだろう。
叩いた自分でさえその掌が赤くジンジンと痛んでいたから。
一瞬浮上しかけた罪悪感も即座に正当防衛という言葉で跳ね返し、強引で理解不能な行動を非難して睨み上げれば彼はクスリと笑って見下ろす。
おかしい。
確かに彼が傷つくような言葉で切り離したと思ったのに、その痛みを自分でも感じながら。
戸惑いがながらも攻めの姿勢崩さずに場にそぐわないテンションの高い機械の音声をただ耳に流し込む。
どうやら彼もそれに意識がいくらしく、しつこく繰り返されるフレーズに可笑しそうに笑って視線を走らせ、ここからは奇行。
何やらポケットを漁り始め中身を握って取り出すとそれを数えおもむろに機械に対峙する。
チャリンと響く投入音に絶句と驚愕で口が開く。
それが4回も響いた瞬間にようやくまともになった意識で不機嫌さを上乗せ。
「何してるんですか?」
「ん?折角だから撮影しながら楽しく話そうかと、」
「楽しく話すことですか?!」
「あっ、ほら、千麻ちゃんはどれがいい?」
私の言葉丸無視で機械の提示してきた撮影モードやらで楽しげに迷う彼に呆れる。
馬鹿らしい。
そう判断して1人そのブースを抜けようとすれば一歩遅く首に回った腕に捕まった。
そのまま引き寄せられた背中が彼の胸に密着して、そのぬくもりに当たり前の安堵を感じた自分にまた叱咤。
だから、これがダメなんだって。
「ちょっ、離してください」
「ん?だって始まっちゃうし」
「一人でどうぞ」
「え~だって、こんな一人で決めポーズとって写ってたら超ナルシストっぽくない?」
「どうせ自分がカッコイイと己惚れているくせに」
「うん、だってあの父さんと母さんから生まれた俺がカッコ悪いはずないじゃん?」
「むかつく!心底ナルシスト全開じゃないですか!」
「あ、ほら、ポーズとって~だって、」
「えっ?あっ・・・」
言われた言葉に一瞬焦って馬鹿みたいに真正面を向いた。
さすがに表情ばかりは間に合わず写ったのは酷く焦っている私の姿。
その画面を見てけらけらと笑う彼にムッとして、そもそもこんな事をするような時間でなかったと再認識。
もっと緊迫して、この関係の核になる深刻な話をしていた筈なのに。



