別に平気だ。
5年間繰り返した関係にリセットして残りの夫婦関係を過ごそうというだけ。
難しいことなんて何もない。
この喪失感だって・・・・・一時の痛みにしか過ぎないのよ。
やり直した時間から再スタートの様に一歩を踏み出す。
私と彼は・・・・これでいいのだ。
「・・・・・・・・なんて、言うと思った?」
「・・・・・・・・・・・はっ?」
一瞬で周りの音が掻き消された。
静寂にも聞こえる。
騒音裂いて響かされた言葉に間抜けな声の響きと表情で振り返れば・・・・。
ああ、なんて意地の悪い微笑み。
性質の悪い・・・・そしてこの笑みの時は諦め悪くしつこい時のそれだ。
「千麻ちゃんともあろう人がさ・・・俺の性格忘れすぎじゃない?」
「・・・・・・はっ?」
ニッと強気に笑った彼が唖然としている私に近づくと何の予告もなしに私の体を抱え上げて歩き出す。
一瞬のことに抵抗も忘れて、それでも混乱する頭で「お姫様抱っこじゃなくてよかった」と馬鹿な安堵をしてしまった。
そしてすぐに舞い戻る理性で突然の行動に眉根を寄せて非難しようと口を開けば、そのタイミングにばさりと何かをくぐりいやに白く明るい狭い空間に下ろされ不満の不発。
よくよくそこを眺め理解すれば、・・・あれだ。
プリクラ?
そのブースの中。
何でここに?と思った瞬間には答えは与えられる。
半ば強引に顎に絡んで引き上げられた顔と、すかさず重なってきた唇で。
一瞬のこととはいえ今のやり取りの後だ。
理性的な自分が在籍していたタイミングで、すぐに彼の胸を押し返すのに彼は上手だ。
すでに読んでいた私の反応を防ぐように頭に手が回った後で、抵抗むなしくさらに密着した唇に耐えるように目蓋を閉じた。
でも、・・・それも一瞬。
何か弱い女ぶってるんだ私?
そう気が付くとパッとその目を開いてさっき以上の力で彼を引き離す。
そして次に瞬間には浮かれたゲーム機の音声なんてかき消すほどの音がその中で響いた。
私が彼を平手打ちした音が。
「っーーーは、・・・ははっ、やっぱ強烈ぅ・・・」
「本当に・・・・DVで訴えますよ!?」
「いや、・・むしろ今強烈なDV受けたの俺だから」
片眉下げて赤く染まった頬を押さえる彼が苦笑いで切り返す。
思わず『確かに』と納得した自分が悲しい。



