言いきって勝ち誇ったように口の端が上がってしまった。
そう、愛なんか無くとも彼女達が羨望しとうとう歪んだそれで彼を貶す程求めた全てを、彼女たちの中で下級な私が手にしているという優越。
いや、別に本気で優越を感じていたわけでなく、ただそう感じさせることで仕返ししたかっただけの話。
私にとって彼の隣に並ぶ事も婚姻も、全て仕事の一環に近い物であるのだ。
だけども、この眼の前のお嬢様方は違うでしょう?
あっ・・・、
どうやら適当に言葉を当てはめる悪態も見つからなくなったらしい。
一番私に詰め寄って怒気を孕んでいた彼女が呆気に取られた後に、綺麗にネイルの施されているその手を上げる。
爪・・・当たらないといいなぁ。
と、冷静に叩かれた瞬間の爪痕を心配して振り下ろされるそれを見つめてしまった。
だけど予想に反してピタリと止まるそれ。
一瞬何の気の代わりか彼女に視線を移せば、彼女自身もその手の不動に驚きを見せる。
そして彼女の後ろで気まずそうに息を飲む他の女。
「ははっ・・・、女の子って本当に恐いよねぇ」
響いた声音に脱力。
ああ、これまたタイミング良く・・・。
きっとコレが他の女子であるなら確実に作りあげられた様なこの救出劇に感激しあなたに惚れたでしょうね。
そんな事を思いながらみるみる青ざめていく彼女の背後でにこやかに微笑む彼を見つめた。
「ただいま。千麻ちゃん」
「・・・・外出時は一言お願いします副社長」
「うん、ちょっとした野暮用で」
「言い訳になりません」
きつく睨んで牽制すれば苦笑いを浮かべた彼が思い出したようにその手に掴んでいた彼女の手を離した。
力なくスルリと落ちた彼女の手。
そして笑えるのは今まで私に散々鬼の様な形相で迫っていた彼女が彼にクルリと体を向けた瞬間に苛められた仔犬の様な表情を作り出した事。
滑稽。
そして・・・そんな姿に騙され甘っちょろい反応を返す彼でもない。
笑顔ばかりは慈悲深い頬笑み、だけど中身は?
「いやぁ、最近の人事ってどうなってるのかなぁ?」
『・・っ・・・』
「仕事も出来ないくせに人を貶す事は立派な顔だけの女子が秘書だなんて・・・、うちの会社も落ちた物だね・・・」
毒舌。
チクリチクリと毒の塗った針を刺す様な地味な嫌味。



