何がしたいのか。
ほとんど衝動だ。
不意に誤魔化し続けていた現実を明確に捉えたような。
戸惑い、不安、迷い、全部当てはまるような感情の不安定さと、リアルに感じた彼の望みに怯えて逃げ出した現状。
なんて馬鹿な。
そんな風に自分に冷静に呆れたのはパン屋からだいぶ離れた電柱に手をつきながら。
無意識に全力疾走していたらしい体が激しく息切れし肩が大きく上下する。
酸素不足で目が回りそうな頭を何とかあげて今ほど走ってきた道を確認するように視線を走らせた。
当然あるはずのない彼の姿。
でもさすがに私の不在には気が付いている頃だろう。
そして・・・焦っている、・・・いや、キレている頃かもしれない。
でも、だって・・・・だって・・・・あからさまな未来を期待してくるから・・・。
体の関係が始まった頃からだろうか・・・。
彼があまりこの婚姻期間の延長について口にしなくなったのは。
まるでそれに触れたら私が消えてなくなるかのような危惧なんだと思う。
対面している一瞬を確かなものとするために、未来の事から目を背け始めて・・・。
違う・・か、背いてるとは違う。
彼は小さくじわじわと私にその印象を刻み込んでいる。
未来もその手にしようと。
それを見て見ぬふりをして誤魔化していたのに、うっかり私が明確に捉えてしまったから不安になって逃げだしたんだ。
「っ・・・・勘弁・・して・・・」
顔を手で覆いながらつぶやいて電柱に寄り掛かる。
少し冷たい秋の風がふわりと抜けていくのに意識が走った。
結婚から2か月。
まだ2か月。
なのにすでにこんな風に感情移入して、この関係に依存している自分がいる。
こんな筈じゃなかった。
慰めて癒して1年経ったら任務完了とただの秘書に戻るつもりだったのに。
彼を恋愛として好きになりたくないというのに、反して私は彼を好きになり始めている。
日々を重ねる毎に許容範囲がぎりぎりに近づく。
まだ理性的でいられる許容範囲の。
空っぽだったはずのそこを予想外にも急速に大量にぬるま湯のようなもので満たしてくる彼。
心地よくてうっかり浸っていたら溢れる限界まできている。
これ以上は・・・・危険。
溢れたら・・・・・・信頼を上回る愛情になる。
恋愛感情なんて副作用強い物に依存した私は、果たして今までのように彼の向上の的確な補佐が出来るだろうか?



