夫婦ですが何か?




何が可笑しいのか。


貶してはいても笑える一言は言ったつもりがないと眉根を寄せ睨みつけるのに、彼ばかりは可笑しそうに、どこか嬉しそうに目を細めると腕の中の子供を見つめた。


そして、



「千麻ちゃん1人で・・・ね」


「はい、【私だけ】で」


「ふぅん・・・」


「・・・・何ですか?」



含み満載の微笑みと言葉の違和感。


追求すればなんとなく危険な事が分かっていたのに性格上落ち着かずに口にしてしまった。


そして瞬時にそのグリーンアイに勝機を感じて焦燥感。



「教育は・・・1人でも可能」


「おっしゃる通りです」


「ただ・・・・その子はどうやって生まれたのだろう。って疑問?」


「・・っ・・・・・」


「ねぇ、実は・・・・10%以上になってきてない?無意識に仮定しちゃうくらいに」



逃げ道無しの追及だ。


自分で発した嫌味の罠に自分ではまった。


そう無意識。


無意識であるから余計に追い詰められてしまう。


無意識に・・・・彼との子供を仮定し想像し引用して未来を語った。


そんな未来が当然であるかのように。


言葉も返せずに呆然としていれば、不意に入り込んできた本来の母親の姿。


『ありがとうございました』とにこやかに彼から子供を受け取るともう一人の子供と一緒に店を後にしていく。


その姿を見送るように見つめてその場に立ち尽くしていれば、彼の名残惜しそうにその姿を見送り苦笑いを浮かべてからゆっくり椅子に座った。



「・・・・・子供の抱き心地って癖になるよね」



思い出すように彼が呟いて自分の手を見つめる。


その姿を見下ろして、自分の腕にもまだ鮮明な抱き心地やぬくもりを思い出して心がざわめいた。


癖になる。


本当に愛らしいと感じた。


馬鹿で無責任な未来を想像したほど。


彼との未来では本当に霞にも近い程の未来だというのに。



「・・・・・・・ちょっと・・・トイレに、」


「ん?うん、どうぞ」



呆然としたままで彼にそう告げれば、微笑んでそう返した彼も僅かに動揺匂わせる。


彼の動揺は多分、私の現状に対してなんだろうけれど。


『やってしまった』『言い過ぎた』、そんな心中だろうか?


そんな彼の横を鞄を手にふらりと抜けて見つめたTOILETの文字。


その表記を視界に取り入れ足早に歩くと扉の目の前を素通りした。


そのまま向かったのはパン屋の入り口。


自分でも愚かで浅はかな行動だったと思う。


だけどもその瞬間が酷く恐くて耐え切れない焦燥感。


重いドアを押し開け外気を感じながら彼を振り返り、その背中を見つめた次の瞬間には脱走。


脱兎のごとく。