キレたと言えばそう。
いや、本当はずっとキレていたんだろう。
見て見ぬふりをして流して大人の対応で自分に収めてきた不満。
それがもう限界で、とうとう蓋が壊れたこのタイミングに今までの不満も溢れだす。
「彼は私を認めました。あなた達と違って私は勤勉だから」
『はっ?』
キッとまっすぐにその目を挑むように見つめて言葉が零れる。
怒気を孕んで優勢だと思い込んでいた彼女の目に少しばかり動揺が走ったのを見逃さず、そして収まらない感情を矢継ぎ早に口にした。
「彼は何よりも誰よりも優秀。だからあなた達の様な手抜きなやっつけ仕事で傍につきたいなんて痴がましい・・・」
『何言ってーー』
「そして彼が陰で他者を貶すだけの低能な女を私生活でも相手にすると?それがただの契約だけの婚姻でも彼は間違ってもあなた達だけは選ばない」
『っーーー』
「彼が私を選んだから見下してる?
勘違いも甚だしい、そんなのは彼と結婚するよりももっと前から。
他者を貶す事に必死で目の前の仕事もまともにこなせないあなた達なんてもうとっくに昔から見下してます!」
ああ、この紅潮は羞恥なのか憤怒なのか。
多分両方でしょう。
今まで見下してきていた筈の私にここまで言われたんだ。
多分彼女のプライドを根っこから砕いたに違いない。
今にも殴られそうな程の気迫。
でもそんなのは恐くない。
だってもっとずっと・・・・・私の方が怒っているんですから。
何も知らないあなた達が、
彼の愛した彼女を、
愛するが故に自分を傷つけた彼を、
好き勝手に語るんじゃない!!
『調子に乗るんじゃないわよ。あんたなんてJrの気紛れなお遊び。すぐに捨てられておしまいよ』
ああ、だから・・・
何も分かってないって言うんです。
遊び?
不正解。
遊びにもならない。
そして結婚を誓ったその瞬間から私達の終わりも約束されている。
だから少しは正解?
「仰る通り」
『はっ?』
「私と彼に愛なんて甘ったるい絆はない」
『何っーー』
「そんな物欲しいとも思わない」
『ーーーっ』
「でも唯一私が彼から得ているものを誇るなら信頼。
それだけでいい。他はいらない、愛なんてそれに比べたら何の価値も無い。
それでもーーーーー、
夫婦ですが何か?」



