彼は基本おしゃれだと思う。
決して常に過剰に着飾っているわけでなくて、さりげないおしゃれさんだと。
さらりと着こなす普段着だって色味や形を考慮して組み合わされて、かといって時間をかけてそれを選んだわけでなく、感性。
直感と自己認識。
自分が似合うものを把握していて、一つ身に纏う物を決めてしまえば次の瞬間にはそれに合わせて思考が働くのだ。
仕事もそう。
そういう部分は尊敬と好感。
でも今は関係ないか。と、迷った末にブーツを選択した。
箱にしまってあったブーツを玄関に置くと流れ作業的に洗面所に向かう。
どうやら彼の準備は終わっていたらしくすでに洗面所にその姿はない。
残り香だけ彼の残像を映して、それを感じながら必要な化粧品を取り出して肌に重ねていった。
少し・・・久しぶりに感じる。
誰かの為にメイクする感覚。
マスカラ一つにも気を使う。
あとひと塗りしたら濃すぎるだろうか?とか、この色は男ウケしないだろうか?とか。
馬鹿馬鹿しい。
だから、反応に期待しても仕方ないというのに。
どうも彼のペースにはめられている気がして眉根を寄せて不完全なメイク顔を見つめた。
すでに薄化粧の会社での自分とは印象を変える。
けばいだろうか?
でも特別仕様と言われたし。
マスカラ片手に不動になって鏡の自分を見つめて数秒。
面倒だと切り捨てたようにマスカラを閉じ薄い色のリップを唇に当てた。
使った物を所定の位置に戻していき、再度鏡で自分を確認すると小さく頷く。
こんなものだろう。
気合が入りすぎるでもなく手抜きでもない。
そしてこれなら並んでも年齢差を感じさせないだろうと一番の重要ポイントのチェックを済ませるとその身をローカに出していく。
さて、我が旦那様はいずこへ。
待ちくたびれているかとリビングに足を延ばせば、何やら雑誌を眺めながらコーヒーを口にしているところで。
私がその身をスッと近づければ気配に気が付きグリーンアイが私を捉えた。
一瞬の緊張。
何だろう、面接の時を思い出す。
第一印象を気にしてその視線にひどく緊張して、じっと品定めするような眼差しに逃げるのも嫌で挑むように見つめ返す。
「ふぅん、」
「・・・・・」
そう一言。
そして外された視線に予想外の反応過ぎてこちらも軽く焦ってしまった。



