かと言って、そんな一言にいちいち歓喜するような私でもなく、心の内ばかりで小さくほくそ笑んで表情は無表情を纏う。
「まぁ、当然です」
「もうここまで来ると突っ込むのも面倒だけどさぁ、そんなに元がいいのに何で自分磨きに無頓着?」
「・・・素の自分で特別困る事態もなかったからでしょうか」
淡々と切り返せば苦笑いだけども納得したらしい彼がクスリと笑い、私の手に服を預けると身を翻して歩き出す。
だけどもすぐに振り返るとピッと人差し指で私を示す。
「素の千麻ちゃんは勿論大好きだけど、デートなので特別仕様よろしく」
そうしてニッと微笑み落とすとクローゼットから姿を消す彼。
でもすぐに水音響くことから洗面所に向かったのだと推測した。
確かにすごい寝癖だったし。
それにしても・・・。
「特別仕様って・・・」
呟きながら再度鏡に体を向ける。
彼が選んだ服を最終確認のように当てて自分を見つめた。
これに似合うようなメイクや髪形にしろという事だろうか?
かと言って髪形はだいぶ制限されて、彼が喜ぶのはロングスタイルだろうと決定。
結局はメイクでそれを示すしかないのかと軽く溜め息をつきながらようやく部屋着を脱ぎ捨て、勝負服とすでに言えないデート着に身を包んでいった。
選ばれたのはボルドー色のニットソーワンピにモノトーンチェックのパンツ。
あとはそれを補足するような装飾品。
この服であるならヒールの高いパンプスだろうか?いや、ブーツ?
一通り身に纏って至る角度から鏡を覗き込んで思案する。
足元一つでガラリと雰囲気変わりそうな2択に真剣に頭を使って鏡の自分とにらめっこ。
だけども・・・。
「・・・・なに悩んでるんだろ」
不意に気がついたそれに自分で突っ込んで呆れてしまった。
いつの間にか真剣にデート服で悩んでいた自分に気がついての僅かな羞恥まで沸き起こる。
今更・・・そう、今更なのよ千麻。
しかも男なんて女が考えるほど細部のおしゃれまで気がついて見ていない生き物なのよ。
そう、どんなに爪の先にまで気を使おうが男の可愛いと女の可愛いには壁があるし、むしろ過剰な装飾は逆効果にもなりかねないのだ。
しかし、彼に至っては違うのか?
どちらかといえばあまり男子が好まなそうなはっきりとした装飾品のチョイスに首を傾げる。



