さすがに歩く度に違和感感じる体が、先程の熱情に満ちた時間を再確認させてきて。
かといって羞恥するでもなく腰を摩りながらキッチンに向かった。
誘うだけあってさっきの時間は彼の欲の方が上回った気がする。
今も鈍く痛むそこを労わる様に撫で、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すとゴクゴクと喉を潤した。
それを片手に彼も向かったであろうクローゼットに向かう。
さて、仮にも【デート】と称された外出。
さすがに普段着すぎる格好はアウトなのかと疑問が走り、同時に彼の忠告も追加される。
面倒な。
そもそも、デートなんてどれくらいぶりだろうと眉根寄せ記憶を辿りながらクローゼットに入りこめば、すぐに伸びてきた手が私からペットボトルを抜きとった。
驚く事もない。
すでに今日のスタイルを決め身に纏った彼がそれをゴクリと煽って私に戻す。
「・・・丁度喉乾いてた」
「・・・あれだけ運動されれば当然です」
「だって千麻ちゃんの声って欲情するんだよね。『足りない、もっと・・・』なんて切なげに言われたら全力疾走しちゃうよそりゃ」
「・・・・キモッ」
反芻する様に声音変えての自分の再現に、辛辣と言える表情と言い方で切り返し。
当然ムスッとした彼を無視し、更に奥に進むと微々たる自分の衣服スペースの前に立った。
そして腕を組んで思案。
数秒後にまだ不貞腐れている彼を振り返り思案の種を投げつけた。
「何着ていいのかわかりません」
「はっ?!」
不機嫌にも見える表情だったかもしれない。
問われた彼もさっきの不愉快なんて一瞬で忘れたらしく、唖然とした表情で私を見つめた。
「な、何でもいいけど?」
「先程はスカートNGだと指定してこられました」
「うん、だからパンツ系なら何でも・・・」
「じゃあ、・・・スーツで、」
「いやいやいや、」
おもむろにハンガーにかかったスーツに手を伸ばし掴むと、さすがに焦った様子の彼がその腕を掴んでの苦笑い。
いや、私だってさすがに常識ある大人だし、デートでスーツを着るなんてバカはしないけど。
「何でもいい。と、おっしゃったので、」
「だ、だからってスーツ!?」
「・・・じゃあ、何を?」
「・・・千麻ちゃん、本気でこのデート面倒だと思ってない?」
軽く思ってる。
でも、そう告げたら目の前のこの人は泣きそうだと口を閉ざした。



