どうしてだろう?
この人を前にすると絶対に素直に『ありがとう』の一言が言えずにいる。
言ったら負けるような、負けたらもう勝てないような。
そんな不安感じて危険予測的に素直さの不足。
きっと彼だって今も笑って『ありがとう』と言われたかっただろうに。
それが分かっているからこそ、彼の苦笑いに後ろめたさを感じてしまう。
でも、彼は凄い人だ。
「はぁ・・・仕方ない・・・」
これ見よがしな溜め息をついた彼。
どういう意図かと視線を移せば、少し真顔の彼がグリーンアイを私の真正面に移動させる。
「千麻ちゃんが素直になる魔法かけていい?」
「・・・・好きですね、魔法ネタ」
「うん、だって・・・これは自信ある」
ニッと悪戯な微笑み。
直後に躊躇いなく唇が重なると、開いていた隣のスペースにゆっくり押し倒されてよりしっとりとキスが深まる。
これは・・・確かに私がかかりやすい魔法。
でも・・・狡いわね。
やっと解放された唇でまずは一息。
その間に表情ばかりは捉えられる距離に離れた彼を見上げる。
妖艶で悪戯な微笑みに見事その場の空気を変えられた気がした。
「・・・・・狡い・・・」
「でも・・・素直でしょ?エッチの時だけは」
「・・・・・自分にだけは素直なんです」
苦し紛れにも言い訳すればクスクスと笑った彼が、私の太ももに指先走らせそのままパーカーを押し上げていき気が付いた事に再度笑う。
「いやん、セクシー。・・・・ノーパンですか?」
「・・・昨夜寝たままの恰好に先ほど勢いでこれを纏っただけなので。別に誘いかけたわけじゃありません」
「そうなの?俺は・・・・さっきの千麻ちゃんの泣き顔にずっと欲情しっぱなしだったのに」
「・・・・それが本音ですか?」
「うん、・・・・しよ?」
ここで?
何て野暮な事は聞かない。
場所なんてこだわる私でもないし、もっと言えばそぐわない早朝だって事もこだわらない。
もしこだわるとしたら・・・。
合わせる肌に・・・・。
器用に動く指先がいとも簡単に私の肌を滑って熱を上げてくる。
彼の申し出に『NO』と答える選択肢もなくて、身を預けて行為に浸る。
首に腕を巻きつけ引き寄せれば彼自身の匂いに軽く安堵し、時々絡む緑が更に熱を上げてくる。



