ここで追いかけて謝ったら少しは可愛げがある。
なのにそれが出来ないのが私なのだ。
ただソファーに座って彼の姿がリビングから消えるのを見送ると、力なくテーブルのカップに視線を移す。
ああ、どんどん温くなっていってる。
さっきまで温かかった筈のコーヒーも時間も。
そして気が付く自分の感情に更に焦る。
こんな感情・・・前の関係であるなら感じなかった筈なのに。・・・と。
苦しい・・・。
酸欠になりそうだ。
感情と関係の葛藤に眉根を寄せて目蓋を下し、天を仰ぐように顔を上に向けて自分の鼓動を感じてみる。
ドクンドクンと平常時より少し早い。
ざわざわとも落ち着かなくて、その顔を両手で覆おうかと手を動かし始めたタイミング。
カシャーーー
耳に響く携帯のシャッター音に思わず口の端が上がる。
良かった。
手で顔を覆った後で。
端を上げた口でゆっくり息を吐くと顔を天井からゆっくり下して目の前を見つめた。
捉えたのは私の携帯でテーブルの上の並んだカップを床に膝つけ撮影する彼の後姿。
ああ、ダーリン・・・。
後ろの寝癖凄いわよ。
さっきは気が付かなかった彼の後頭部の寝癖にも小さく笑うと、そっと手を伸ばし癖のついた髪に手櫛を通した。
瞬間に反応し振り返る姿。
「ん?癖ついてる?」
「はい・・・芸術的に」
「こっちも芸術的に撮影終了だよ」
そう言ってにっこりほほ笑んだ彼がぽいっと携帯を放り投げてきたのを慌ててキャッチして非難の眼差しを向けてしまった。
「受け止め損ねて液晶割れたらどうするんですか?」
「ん?下ラグだし、千麻ちゃんが座ってるのもソファーだし傷はつかないでしょ?」
「そういう問題では・・・」
「それより・・・、写真。・・・どう?OK?」
私の膝の上で腕を組むとちょこんと顎を置いて上目遣いの確認。
うっかり可愛いと思った私の思考・・・死ね。
それでもグリーンアイが子供のようにワクワクと『早く早く』と急かしてきて。
促されるまま画面に表示される写真を確認した。
「どう?」
「・・・・・頼んでないのに」
「千麻ちゃ~ん?」
「・・・・・・・・・・・・仕方ないので保存しておきます」
「もう~、素直じゃないなぁ・・・」
すみません・・・。



