まんまとしてやられた彼の手管。
こうして今までも他の女性たちにも拙い技を披露して、完璧でない【魔法】で夢を見せてきた?
その答えを探るように手の中のカップの自分を見つめてしまう。
彼が描いた私は滅多に魅せることない笑みを浮かべ、その下にはご丁寧にも【Smile】の文字。
笑ってほしい。
そんな願掛けを強く感じるそれに魔法がかかったように口の端が上がりそうになるのを必死で堪えた。
「・・・・・ありがとうございます」
「チェッ、魔法の失敗。笑うまではいかなかったかぁ・・・」
「魔女に魔法で挑む気ですか?弟子の分際で」
「はい、すみません。完璧な魔女の奥様には到底かないませんよ」
「あっーーー」
決していじけてじゃなく、少しふざけた感じに笑いながら言われた言葉。
そしてそのまま彼が持っていたカップを口に近づけたのに慌てて待ったをかけてしまった。
だって・・・・まだ、写メってない。
「・・・・何?」
「いえ・・・・・・・・・・・・・・脅す証拠を撮り忘れたと・・・」
「・・・・・・・・・ねぇ、・・素直に写真に残したかったって言えないの?」
彼の呆れた眼差しがちくちくと刺さる。
的外れだと眉根を寄せてみても視線をそらしてる段階で私の負けかもしれない。
可愛さのかけらもない姿に、それでも彼は慣れているし理解していると苦笑い浮かべ、目の前のテーブルに自分のカップを静かに置いた。
そして私の手からもカップを抜き取ると隣に並べて満足げに微笑み私を見つめる。
「さぁ、どうぞ?」
「・・・・・・・やっぱ・・いいです」
「え~、なんなのそれぇ・・・・、千麻ちゃんも大概意地っ張りだなぁ」
はい、本当に。
自分でも呆れる意地っ張りなのにどうも引くことできずに興味が逸れたとソファーに寄りかかる。
さすがに感じが悪いだろうかと若干の焦燥感と気まずさ。
それでも謝る術を知らず変なプライドが働く自分への自己嫌悪。
ああ、最悪な女。
八方ふさがりで自分で首を絞めているな状況に、スッと静かに動きを見せたのは彼。
ふわりと巻き起こった風に不安を感じて、見上げた時にはすでにその背中しか捉えられず。
言葉も残さずに歩き去る姿に言いようのない焦り。
さすがに・・・・怒ったのだろうか?



