どうしても収まらない感情で自分でも抑えの利かない涙を手で擦ると、必死で宥めてくる彼の腕から半ば強引に抜け出てベッドのぬくもりを手放した。
外気が肌に触れると鳥肌が立つ。
すぐに床に雑に落ちていたパーカーのみを歩きながらばさりとかぶると肌を隠した。
「千麻ちゃん~・・・・機嫌直してよ~」
そんな響きを背中に感じつつも、立ち止まる事なく寝室を出てリビングに向かった。
肌寒い。
9月も末になるとやはり朝や夕方は空気が冷たい。
濡れた頬もその空気に冷やされより一層冷たさを感じ、泣いていたせいもある鼻をすすってウサギ入っているケージに近づきその姿の確認。
小さくて黒いフワフワの塊が巣箱の中で丸くなって鼻を動かしている。
床に置いてあるケージの前にしゃがみ込んで、何の気なしにケージの縦ラインを指先でなぞって下ろしていき。
その延長線上にある餌箱の牧草の減りに気が付いて近くにあったそれを足した。
そのまま丸く蹲っているウサギにも指先で触れてみる。
さすがウサギの毛はふわりと暖かいと感じ、ようやく口の端が上がりかけたタイミング。
自分の横にスッと並んだ気配。
瞬時に上がりかけていた口の端を下すとケージから自分の手を抜いてしっかりと入口を閉める。
「ねぇ・・・ご機嫌直してよ・・・」
「・・・・・」
困ったように方眉下げての微笑み、『仲直りしよう?』と全面で訴えてきているのはすぐに理解する。
だけど問題はすでに彼でなくて変に自分の中に疼いている羞恥心なのだ。
自分では真面目に考え上げた候補がどうやらずれた回答だった上にことごとく笑いもの。
久々に無能感を感じて悔しさと羞恥入り乱れたこの葛藤はなかなか収まってくれないらしい。
結果どう反応していいのかわからず、スッと立ち上がると彼の横を抜けてソファーに身を置くとすぐに横に倒れた。
全てを埋めて彼が隣に座れないように。
そして視界のシャットアウト。
目蓋を閉じるとその前に手を置き顔を隠した。
どうしても塞ぐことの出来ない耳に彼のもどかしいため息が入り込む。
これは・・・・さすがに私が大人げないと理解している。
理解していてもどうもままならないのが一度決壊した感情。
申し訳ないと思いつつも、どうしても意地張って現状の空気に持ち込んでしまった。



