「【サンボ】はどうでしょう?」
「はっ?【サンボ】?」
「はい、先刻あなたが【チビクロちゃん】とおっしゃったので、」
「・・・・ちびくろサンボ?」
「ハイ」
「・・・・・・・・・・・・・・ぶっ、ははははははは、」
どうやら妙案だったらしい。
むしろさっきより笑いを誘った気がする。
と、言うよりここまで事如く笑われると逆にだんだん折れてくる。
それでも負けず嫌いと羞恥心の隠ぺいで声ばかりは苛立ち露わに反論響かせてみた。
「だ、だいたい、【ぴょん吉】の何がいけないんですか!?ウサギは跳ねるじゃないですか!?」
「うんうん、まぁ、でもその理屈で言ったらカエルなんかも当てはまって、むしろカエルにつきそうな名前だなって、」
「そ、それは・・・・否めませんが・・・・。じゃ、じゃあ、【サンボ】は何が!?そもそもあなたが言った【チビクロちゃん】を基に捻ったのに」
「いや、もし【ちびくろサンボ】を基に捩るなら逆に俺の【チビクロちゃん】をまんま名付けた方が可愛げがある気がして、」
「・・っ・・・・」
「ん?まだ捻る?」
「く、【くろサン】・・・・」
「・・・・ぶはっ・・・」
苦し紛れだったと確かに認める。
と、同時に久しぶりに自分の欠点を見た気がして落胆。
そして羞恥心に久々に染まる。
布団を顔まで持ち上げるとそれに埋め視界のシャットアウト。
背後から張り付いていた彼がさすがに笑いを微々たるものに抑えてふざけた感じに覗き込んで。
「千麻ちゃーん?フフッ・・、何?なんか照れちゃった?」
「・・・・」
「千麻ちゃーん、大丈夫だって、そんな変なところの欠点なんて可愛いポイントだってぇ・・プッ・・・」
「・・・・・」
「ほらほら・・・、ね?」
からかい半分に宥めの声を響かせ彼が私の顔を覆う布団をその手で下げた。
捉えた彼の表情は最初まだ笑気残る苦笑い。
なのに徐々に戸惑いのそれに色を変えていき、ここにきてようやく彼の不快な笑い声を止めることが出来た。
「・・・」
「・・・・えっ?・・ちょっ・・・」
「・・・・グスッ・・・」
「っーーーーー泣くぅっ!?えっ?嘘っ・・何で泣いてんのぉ!!?」
「・・・・嫌いです・・・」
「うっわ・・・めっちゃ突き刺さる!痛いっ、辛辣に言われるより痛いよ千麻ちゃん!」
「・・・・・」
「千麻ちゃん!?・・っ・・ごめん?ねぇ、ごめんごめん、千麻ちゃあん・・・・」
泣かないで。
そんな風にギュッと抱きしめ頭を撫でたり顔を覗き込んでくる彼の顔がかなり必死。
別に怒っているんじゃないし悲しいでもなくて・・・。
羞恥心と悔しさの涙。