「・・・・千麻ちゃんの誕生日の振り替え休日って事で・・・・臨時休業」


「・・っ・・・・馬鹿ぁぁぁっ!!」


「・・・って、言われると思ったから俺たちだけ有給もぎとってきたぁ」


「っ・・・・・」



してやったり。


ニッと悪戯成功とばかりに笑ってピースサインかます姿に、叫んだ瞬間起こしていた体が脱力。


勘弁してくれと頭を片手で抱えて深く溜め息。


そんな私を他所に、猫がじゃれつく様に身を起こし私の首筋に甘噛みしてくる姿。



「・・・・ごめん・・・嫌だった?」



狡い・・・。


甘えながら『怒らないで』とばかりに申し訳なさそうに表情を映す彼。


綺麗な緑で私を上目づかいで見上げ、肩に頭を寄せると追い打ちの一言。



「千麻ちゃんとデートしたくて・・・」


「・・・・はっ?」


「だって俺達ってまともにそういうのした事ないでしょ?」


「確かに・・・・、らしい事といえば晩酌とベッドの上の乱れた関係でしょうか・・・」


「ね?夫婦っていうか・・・・愛人みたいだよ。俺たち別に爛れた関係じゃないのに・・・」



複雑にそう漏らした彼に思わず軽く噴き出した。


でもすぐに非難するような彼の視線で口を閉ざす。


確かに・・・・愛人。


それが夫婦よりしっくりきそうな2人ではある。


妙に納得する響きに落胆もせず物思いにふければ、こっちを見ろとばかりに彼の指先が私の微々たる胸をツンと突いた。



「ね?・・・だから健全な夫婦デートしましょうよ?」


「・・・・・デートなんてもう数年前の記憶しかないので何をしていいのかわかりませんが」


「じゃあ、後でデータ収集しよ。得意でしょ?」


「・・・・ネットで?」



真面目にそう答えたつもりだった。


でも彼がおかしそうに噴き出すと首を横に振る。



「お互いに・・・何が好きか、どこに行きたいか考えようって言ってるんですが?」


「・・・・・よく・・・分かりません」



これも本気。


突然そう聞かれても自分がしたいことなんかもあまり浮かばなくて、考えれば考えるほど浮かばない自分に呆れてしまう。


どんだけつまらない人間なのだと。


その感情のまま困ったように眉尻下げれば、予想外だったのか驚いた表情を見せた後に苦笑いを浮かべる彼。