「俺は千麻ちゃんの笑顔を出来る限り記憶したい。
ただ・・・それだけ・・・」
そんな記憶・・・後々困る要素になるかもしれないのよ?
楽しければ楽しいほど痛みを残すような。
それでも・・・・この関係に夫婦らしさを求めるの?
この身一つじゃ・・・・・足りないの?
・・・・知ってる。
全然足りないのよね?
お互いに貪欲な私達だから、一つ得たら二つ三つと欲しくなる。
時間を共有すれば感情も共有したくて、感情を共有すればお互いそのものが欲しくなって。
欲に忠実に求め合えば・・・・より本物に近い関係が欲しくなる。
貪欲よね・・・。
「・・・・・・ねぇ、・・・楽しい魔法のお返しに・・・、私も魔法を使ってみせましょうか?」
フッと口の端を上げて見せる。
少しだけ意表を突かれた彼が驚きつつも口の端を上げた。
いいわ。
つまらない思考はやめましょう?
せっかく高揚した気分だもの・・・楽しい感覚で埋め尽くしましょうよ。
「魔法?・・・・俺のそれには敵わないでしょ?」
「どうでしょう?逆にあなただからかかりやすかも・・・」
「ねぇ・・・単純だって馬鹿にしたーーーー」
心外だと眉根を寄せたタイミング。
フッと笑ってみせると掴んでいたネクタイをグイッと引き寄せ唇を重ねた。
冷たい。
夜風に冷えた唇の冷たさを感じ、それを温めるように啄んでゆっくり離れる。
そして綺麗な緑を捉えられるほどに顔の距離を離すとニッと微笑む。
「あなたを喜ばせる魔法は得意です・・・」
「ああ・・・確かに俺は単純にかかりやすいかもね・・・」
「・・・・魔法の呪文でも唱えましょうか?」
焦らすように溜めて確認。
当然苦笑いの彼が方眉下げて私の額に額を寄せる。
「是非・・・・強力な魔法にかかってみたい・・・・」
「・・・・・Mですね」
「ふっ・・・千麻ちゃん、」
焦らすな。
そんな言い方にクスリと笑うと再度唇をそっと寄せる。
でも触れさせたりしない。
その存在掠める距離で囁く。
「最高の誕生日・・・・・、ありがとう・・・茜・・・」
「・・・・・強力・・・、欲情しそうなくらい」
返された困ったような響きにクスリと笑うと、すかさず唇を塞いで彼の首に腕を巻きつけた。
すぐに彼のぬくもりにきつく包まれる。
もう・・・その後は・・・・・、必然よね?



