そして最大の不覚は、、
「フフッ、大丈夫?千麻ちゃん」
ああ、この人になんて弱みを。
予想通りだと満足げに微笑む姿がわざわざ私の顔の変化を確認するように覗きこむ。
変化。
ああ、もう・・・・、嬉しいじゃない。
見事不意打ちの称賛にドキリとして顔が熱くなり、きっとその頬は赤い筈。
そう、元々は社長の秘書の1人として他の先輩の秘書について仕事をしていたのだ。
それが半年もした頃に突如の担当替え。
異例の中途半端な時期の変更に困惑していた私に言い渡されたのは5歳も下の我儘なお坊ちゃんの補佐。
一瞬・・・、私は社長に何かしてしまったのかと悩んだほど。
『今日から全力で俺の為に動け』
それが彼につく初日に言われた言葉。
速攻で辞表を出そうかと迷った一言でもあった。
でも傍にいれば理解していくその実力。
蛙の子は蛙なのだと。
指示された無茶な要求も苦労の末こなせばそれを糧に彼が華々しい結果を得る。
それを目の当たりにした瞬間に感じるあの鳥肌の立ちそうな達成感。
七光りなんて言わせず、周りも黙してその地位を認める姿の手となり足となり傍にいた5年。
不意の我儘でさえ黙って聞いてしまうほど彼はそれ以上の輝きを私に見せてくれるのだ。
そして築き上げた信頼関係。
それがまさか結婚にまで繋がるとは思っていなかったけれど。
ああ、でも、純粋に嬉しい。
何が嬉しいのか、その答えは明確。
自分の能力を見出し信じ選んでくれたことに単純に歓喜してしまった。
それは下手な口説き文句や愛の言葉なんかよりもずっとずっと私には響いて心が震える。
でも決して恋愛的な意味ではないけれど・・・・。
それでもドキドキと騒ぐ心臓をゆっくりと宥めていき、静かに息を吐くと私の様子をニヤニヤと傍観していた姿に視線を向ける。
「どう?ちょっとは契約期間伸びた?」
「そうですね、1分くらいは・・・」
「うわぁ、厳しいなぁ千麻ちゃん」
参ったとばかりに眉尻を下げた義父がクスリと笑うと腕時計を確認し扉に体を捻る。
すかさず反応し先に扉を開いて退室する姿を見送ると、通り過ぎざまに立ち止り思い出したようににっこり微笑んで爆弾を投げた。



