そして更なる指摘としてての中のスープボウルが蓋付きであること非難。
「手品にしては・・・、種も仕掛けも感じさせますね?」
「まぁ、そこは素人芸。・・・大目にみてよ」
ニッと困ったように笑う彼に「ふふん」と鼻で笑うと手をすっと差し出しそれを促す。
続きをどうぞ。と、言うように示すと彼がいたずらなグリーンアイを細めて蓋に指先を走らせた。
「じゃあ、今度こそ・・・1(ワン)・・2(ツー)・・」
ゆっくり、溜めるようなカウントに一瞬本気でハトが飛び出したらどうしようかと不安になった。
それでも止まることなく最後のカウント。
「・・3(スリー)・・・」
スッと開けられた蓋。
飛び出した白いハト。
な、筈がなく、それでも驚く結果に思わず口元緩んで唖然とした。
そして心が沸く。
痛くて苦しいくらいに。
「・・・ああ、失敗。・・・、ハトじゃなく・・・ウサギだ」
困ったように眉尻さげた彼が失敗だとカップの中身を示す。
すっぽりとその中に入り込んで時々モゾリと動く姿にあっさり心奪われ心臓が跳ねた。
「・・・失敗だけど・・・、気にいってくれた?」
狡いわダーリン。
私の気持ちなんて朝から知っていたくせに。
「あなたは・・・本っ当・・・責任とか・・・・・どうしてそう・・・・、
っーーーーーー可愛い・・・です」
ダメだ。
感情のまま生き物を飼って無責任さを非難しようとしても今は出来ない。
どうしても心が歓喜する。
そして恐る恐る彼に近づき目の前に立つと、カップの中の小さなフワフワの黒いウサギを指先で愛でた。
「っ・・・・可愛い・・・可愛いぃぃ・・・」
口の端が上がってしまう。
眉尻も下がってかなりいつもの自分からの逸脱。
そんな私を可笑しそうに彼が笑うと、カップから優しくウサギを取り出し私にそっと手渡した。
「HAPPY BIRTHDAY、千麻ちゃん」
「・・・おめでたくないです。三十路に近づいただけです」
「関係ない。・・・俺には愛しい奥さんの大切な誕生日だよ」
「・・・・・特別なんていらないのに。・・・楽しい時間やプレゼントなんて必要ない。そんな物で縛らなくても・・・この身一つで妻ですよ?」
「うん・・・でも、楽しくなかった?」
それも狡い質問ねダーリン。
答えを知っている質問なんて意地悪以外の何物でもないわ。



