夫婦ですが何か?






そして図ったように耳に入る彼の声。




『ごめん・・・また失敗した』




思わずその言葉に額に手を当てての苦笑い。


そしてしゃがむと床にぽつりと置かれていた物を持ち上げ見つめた。



「・・・・確かに・・・失敗ね」


『ごめん、気に入らなかった?バラがいい?』


「・・・・ううん、バラより素敵・・・。ピンキー・・これも好きな品種ですよ」



置かれていたのは鮮やかな花でも何でもない。


小さな掌サイズの鉢植えに淡い独特なピンク味帯びた一見大輪の花が咲くようにその身を重ねている多肉植物。


昼間の会話を基に購入したのだろうと推測。


バラの花よりもずっと自分にはストライクに好みにハマる物。


その鉢をしっかり持つと一つの確信。



「もしかして・・・誰かから入れ知恵されました?」


『・・・・何の事?』



クスリと笑った声が響く。


ああ、きっとバレたのね。


今日という日の意味が。


これは見事してやられたわ。


そう苦笑いを浮かべるとスッと立ち上がり玄関を開けて中に戻った。


足早にローカを抜けてリビングに戻ればニッと微笑む彼との対峙。


悪戯なグリーンアイの勝ち誇った揺らめきに、今日は苛立ちを感じない。




「どう?突然登場マジック」


「電話で誘導して、・・・ベランダにいる間に玄関にこの鉢置いて。静かに部屋に入って鍵をかけ直してから寝室に隠れた?」


「うーん、・・・・マジシャンの助手でもする?千麻ちゃん」


「・・・遠慮します。失敗続きのマジシャンなんて儲かるはずありませんから」



あっさりと種明かしして見せれば、苦笑いでおちゃらけて返す彼に嫌味で返す。


それでも小さくても楽しい時間で盛り上げようとしてくれたことには純粋に感謝。


さすがに素直にお礼を言おうと口を開きかけたけれど、不意に彼の持っている違和感のある深めのスープボウルに視線を移す。


そして怪訝な表情で彼への無言の確認。


当然悪戯な微笑みで返される。



「マジシャンと言えば・・・・やっぱりハトを出すよね?」


「・・・シルクハットからですね。でも・・・あなたが持ってるのはスープボウルです」


「要は・・・取り出すものは何でもいい。出てくるものが肝心でしょ?」



ワザと持っているものを指摘すれば、うーんとあからさまに視線を走らせた彼が問題ではないと軽く笑う。