どっちにしろ人の気配ではなく全て機械音。
孤独を強める音だと鼻で笑うと体を横に向けた。
そんなタイミング。
加わった機械音に一瞬確かめるように不動になって、規則的に響くそれが着信のバイブ音だと気が付くと体を起こした。
テーブルの上の携帯を視界に捉えれば、表示されているのは【副社長】の文字。
思わず笑ったのは、彼がこれを見たら不満げにいじけると想像したから。
そしてようやく手を伸ばし震えるそれを掴むと応答ボタンをタップして耳に当てた。
「契約違反よダーリン。外出時は時間報告必須って言わなかったかしら?」
『ふっ・・・はは、はい、すみません』
開口一番の先手。
彼の声が響くより先に嫌味を口にすれば苦笑いの彼が謝罪を返す。
その声の響きに満足すると意識なく口の端が上がって、抱いていた胸の葛藤が薄れていく。
「・・・・何事もなく・・・つつがなく終わりましたか?」
『そうだね・・・・つつがなく・・・、もうこんなお誘いは来ない程に、』
「・・・まさか副社長にあるまじきマナー違反を?」
『いや、・・・丁重に、大道寺の紳士としてお断りしましたよ?』
「・・・どこまで信用していいんだか」
多分、彼なりに紳士に相手の女性に接したのだろう。
おおよそ予想のつく姿と言葉に呆れた笑みを浮かべ、それでも馬鹿みたいに安堵した。
もう二度とないという彼の言葉に。
疼いていた独占欲からのもどかしさの解消。
自分の醜い部分が消え去って脱力しソファーの背もたれに身を預けた。
そして不安要素なくなればここからは意地悪。
「で?つつがなく終了した割に・・・どこで遊んで非行に走っているのダーリン?」
『いや、思わぬ不測の事態があって・・・走り回ってた』
「不測?・・・・財布でも落とした?」
『酔い覚まし?』
「酔い覚ましにランニングですか?ずいぶん健康的なんですね」
『・・・・千麻ちゃんと激しい時間の為にフットワーク』
「馬鹿ですね」
『うん・・・俺って・・・本当に馬鹿』
ふざけて非難した言葉に、少しばかり感情的にトーンを落とした彼に疑問が走る。
心底そう思っているような口調に眉根を寄せ声をかけようとした瞬間に逆に彼の声が響く。
『ねぇ・・・今からさ、面白いマジック見せようか?』
突然切り替わり、さらに言えば突拍子もない事を言い出した彼に「はっ?」と呆気にとられ言葉を失う。
ダーリン?
もしかしてかなり酔っているの?



