「では、・・・そろそろ戻ります」
「もうそのまま姿現すな。永遠に、彼女の前にも」
しっしっと育ち悪く手を振ると、クスリと笑った姿が俺に背中を向けて歩き出す。
残り香に眉根を寄せ、相変わらず不快だと舌打ちを響かせたと同時。
「ああ、もう一つ・・・」
「なんだよ?」
もうここまでしつこいと逆に呆れるか賞賛ものだ。
そんな風に睨むのも疲れて振り返った姿を見つめれば、どこか意地の悪さ感じる微笑み。
そして弾かれたのは期待外さぬ意地悪な知ったかぶり。
「知ってはいると思いますが・・・・、奥様の生誕記念日終了するまで・・・あと4時間弱です・・・」
「・・・・・」
「家に戻ったら千麻に『HAPPY BIRTHDAY』と言っていたと伝言お願いします」
ゆっくりと嫌味な姿が背中を向ける。
その姿を視界に捉えても見てはいない。
むしろ思考からはその存在はもう弾かれて消えていて、今すべてを占めるのは・・・。
嘘だろ・・・・?
千麻ちゃん・・・誕生日ですか?!
理解。
と、同時に繋がる今日の様々な疑問。
彼女がアンラッキーDAYと告げた事や父親が彼女に与えた突如の高級なお菓子。
そして父の呆れ顔と、珍しく出かけ際に本心漏らした彼女の姿。
『・・・・・行くの・・・・・やめますか?』
「っ・・・・千麻ちゃんのアホォ!!」
心臓が騒ぐ。
自分の馬鹿さ加減に・・・、彼女の馬鹿さ加減に。
思わず片手で顔を覆うと焦燥感で目が回る。
俺・・・何してんだろう?
彼女の誕生日に・・・初めて、夫婦としての記念日に・・・。
ねぇ・・・・今、1人で何してるの?
ああ、
帰らないと・・・・。
弾かれた。
結論が引き金のようにソファーから勢い任せに身を起こし、足早にローカを戻ると会場であった襖を開けた。
少し勢いあったのか、その場の視線が俺に集中し驚愕に染まる。
彼女ばかりはすぐに視線はずし気まずさも垣間見せ、でも我が父親ときたらどうやら察したらしくニヤリと含み満載の意地の悪い微笑み。
その姿に非難するように嫌味な微笑み返して一言。
「覚えてろよ・・・」
「何の事だか・・・」
本当にこの父にはいつか大きく仕返ししてやる。と、決意をすると自分の上着を雑に掴んで、礼儀ばかりに彼女と父に頭を下げた。
あとは・・・・疾走。



