敵うところなどないだろう?と自分の奥様自慢を口にすれば見事言葉を失った彼女が馬鹿みたいに不動になる。
プライドの崩壊だろうか、少し赤く染まる顔は怒りか羞恥か。
まぁ、知ったこっちゃない。と、クスリと笑うと仕事には影響残さぬようにさらなる釘打ち。
「部屋に戻りお父上に不満を漏らすのも結構だ。でもそうしてお父上があなたの言葉に賛同すれば・・・私の父もそれなりに憤るかもしれません。
息子の・・・、大道寺家に嫁いだ彼女を貶されたと見做して、
・・・息子の私が妬いてしまうくらいに・・・父は私の妻である彼女を寵愛している」
「・・っ・・・」
「よく・・・諸々思案の末に行動くださいね・・・」
下手に喚けば家ごと潰す。
そんな含み孕んだ言葉を向ければ、さすがに野心も打ち砕かれる。
グッと色々な物を飲み込んだらしい彼女が、最後のあがきなのかニッと微笑むと背中を向けて歩き出す。
小さなプライドの維持。
それには小さく拍手を心で送り、やっと落ち着けるとその身をソファーに投げ出した。
ああ、どっと疲れた・・・・。
それでも憂さ晴らしは出来たし【次】がなくなった事への安堵。
あとは・・・早くこの時間が終わればいいという問題だけ。
あと30分程だろうか。
酷く長く感じる1分の経過にうんざりして目蓋を閉じ息を吐く。
そんな瞬間。
鼻につく匂いに眉根が寄る。
不快。
それこそさっきの女よりももっとずっと。
「・・・奇遇ですね、こんなところでお会いするとは、」
記憶するブラックリストに名前綴る男の声音。
厄日か?と眉根を寄せて目蓋を開ける。
そうして視線走らせればスッと身長のある男の嫌味な微笑み。
あれだ、千麻ちゃんの元カレで害虫・・・恭司?だっけ?
「・・・・・・何でここに?」
「上司の付き添いです。で、なければ並の一般人である私がこんな格式高い店に出入りなんて・・・」
「じゃあ、早く仕事に戻ったらどうでしょうか?」
嫌味ったらしい説明の言葉にこっちも嫌味に微笑んで立ち去れと促してしまう。
こいつと関わるとろくなことが無いと学習の上の警戒。
なのに性質の悪いことにニヤリと笑った姿が腕を組むと探るように見下ろし視線をゆっくり他所に走らせた。



