「・・・何も出来ないお坊ちゃまだから心配だっただけです」
少しの思考の後に嫌味半分で父であるその人に告げると、一瞬双眸見開いてから困ったように噴き出す。
くっくっくっと小刻みに笑うと『確かに』と肯定し数回頷いた。
「・・・・アレは・・・俺と違って優しいから。その優しさで傷も負いやすい」
「・・・優しいですか?」
「まぁ、普段の意地悪は愛嬌の類だろ」
「ハタ迷惑で愛らしさのひとかけらもない愛嬌ですね」
「好きな子は苛めたいんだよ」
そう言って意味ありげに私を指さしてくるのを、眉根を寄せ指と悪戯なグリーンアイを交互に確認する。
そして間違いなく私を示した言葉に溜め息を吐き首を横に振った。
「大きくお忘れでしょうが、御子息が私と結婚したのは愛した女性を手放したからですよ」
「ねぇ、まさか身を引くと思ってなかったから驚いた」
「・・・・それが、先ほど社長も仰った副社長の優しさと言う物では?」
「うん、そこがもう俺とは違うよね。俺は【愛】を掲げて身を引いたりしないもん。力づくでも強引でも俺が縛り付ける」
「・・・・・その点が似無かったのは副社長には幸運と言えたのかもしれませんね」
「言うねぇ。千麻ちゃん」
私の嫌味にニッと口の端を上げた姿がよく似てると思った。
でも根本的に違う。
やはり、比べてみればわかる。
彼は・・・優しすぎるのだ。
そしてどちらに信頼置き好感が持てるかと言えば・・・、
優しすぎる我儘。
「まぁ、1年でも10年でも夫婦である内は仲良くしてやってよ。あいつは5年前から千麻ちゃんに一目惚れしてんだから」
「はっ?」
耳を疑う様な一言に見事反応し怪訝な表情を向ければ、してやったりと笑う顔に若干の敗北感。
また何かの冗談かと非難しようと口を開きかければ、すぐに追加された事実。
「『彼女、俺に頂戴』」
「・・・・」
「それがあいつが俺に言った我儘」
懐かしむように軽く笑って弾き出した言葉。
あいつと言うのは間違いなく彼の事だろう。
だけどもタイムライン的にはいつの?
いや、だいたいの予想はついているのだけど。
そしてその答えを確かなものにしていく声の響き。
「当時俺についていた君の仕事ぶりに惚れた茜が、俺も気にいってたのに我儘で君を奪い取ったんだよ」
「・・・・」
ああ、予想外。
変化球?



