Side 茜
ああ、予想はしていたし、それなりに覚悟は決めて臨んだのだけど・・・・。
目の前に並ぶ高級料亭の食事の神々しさには思わず心は歓喜する。
それでもそれを相殺するような絡み付く鬱陶しさに心底うんざりして味覚も鈍る。
視線がウゼェ・・・・。
それに対して平静を装っての作り笑いもかなりしんどい。
頬筋も筋肉痛なんてあるんだろうかと真剣に考えてしまうほど感情に反した微笑みに疲労し、全てを飲み込むように冷酒の入った杯を空けた。
失敗したと思ったのはそのタイミング待っていたかのようにスッと馬鹿丁寧に差し出された冷酒。
内心勘弁してくれと呟いて、それでも表面で形ばかりに微笑んでそれを受け入れる。
目の前でさも慈愛に満ちたような完璧なしおらしいお嬢様を見せつける女が満足そうに口元に弧を描く。
「・・・・お気遣い、ありがとうございます」
「いえ・・・、この程度の事・・・当然の気配りだと心得ております」
出来る女でしょ?
と、言いたいのか?
そんな副音声感じそうな彼女に自分も副音声としては嘲笑響かせる微笑みで返していく。
隣に座る父親ときたらそんな娘の完璧さを誇りと言うように微笑んで見つめ、何を期待してか俺に視線移してのドヤ顔ときたものだ。
馬鹿2代・・・。
何を期待して勘違いしているか存じませんが、俺はご覧のとおり左手に既婚者の証を光らせる誠実な男なんですがね?
そう言ってやりたい。
まぁ、絶対に口にはしないけれど。
そしてまたこみ上げた不満を酒で流そうと口に持っていく最中。
「茜さんは、お父様血強く、お仕事の面では本当に才能豊かに発揮して実力を伸ばされているとか。・・・素晴らしい才能をお持ちですね」
どこか夢心地。
心底尊敬しております。
そんな雰囲気を精いっぱいに目を細め微笑んで過大評価なお世辞を口にした彼女をまっすぐに見つめた。
でも、話題を振るにはよく考えたらしい。
ここで私生活に触れてくるほど馬鹿じゃないらしい。
お見合いのようなお決まりの『ご趣味は?』なんて聞こうものなら即座に奥さんである千麻ちゃん絡みの会話を持ち出してやろうと思っていたのに。
でも・・・ちょっと詰めが甘いねお嬢さん。
「才能なんてそんな・・・・。俺が数年でここまで上り詰めたのは今は妻である秘書の彼女の優秀な補助あっての事ですよ。彼女ほど有能で信頼できるパートナーはいませんから」
にっこりと、言葉一つ一つ丁寧に感情込めての彼女の賞賛。
自分には過去現在更にその先にまで彼女が必要という意思表示。



