「・・・・は?・・・何・・・」
「・・・・・血迷いました・・・・お気になさらず、」
驚愕の表情で見つめる彼に咄嗟に取り繕った反応を返し、再度その扉を強く押した。
それでも当然逃がすはずのない彼が上回る力で引き戻すと、私の顔を至近距離から覗き込む。
どこか必死。
聞き入れた予想外の言葉の詳細を知りたいと、真剣なグリーンアイが私を射抜いて逃がさない。
これは私のミス。
完全なる隙。
少し動揺した心が乱れて脈が速まる。
何を口にしていいのかわからず中途半端に開きかけていた唇に、我慢の限界だと彼の指先が触れて言葉を求めた。
「・・・・・・甘える・・・ポイントだよ?」
「・・・・・・甘えたいことなんて・・ありません・・・」
「千麻・・・・、言うはタダだよ・・・・。甘えられても・・・・今日は・・叶えられないかもしれないけど・・・」
「叶わないと知っている事を口にするほど馬鹿じゃない・・・。そして言って虚しくなるのは私ですから絶対に言わない」
そう、
無意味である要求を告げたらその分寂しさが強まるだけなんだ。
だからこそ絶対に口にしない。
そう決意にも似た意思で口を閉ざすと彼を見上げた。
てっきり呆れたような表情をされるかと思ったのに、向けられたのはどこか柔らかい苦笑い。
調子が狂うような反応の解釈は彼の口からあっさり零れる。
「ねぇ・・・本当に千麻ちゃんは素直じゃない」
「ええ、それは自負しております」
もう聞き飽きた感想。
自分が素直でないことなど自分が一番理解しているし今更直そうともしない性格だ。
だからこそ嫌味に返したのにそれにも微笑みで返してくる彼。
そして含みのあるような言葉での確認。
「気が付いてる?」
「何をでしょうか?」
「『絶対に言わない』そう言ってる段階で裏に千麻ちゃんの甘えが垣間見えるって・・・・」
「・・・・」
「千麻ちゃんの負け。・・・ねぇ、素直に言っちゃえば?」
『寂しい』とでも?
方眉下げての困ったような微笑み。
意地を張るなとその言葉を求める姿にあくまでも意地を張り通して口を閉ざせば、クスリと笑った彼が指先で私の唇をなぞり。
「分かった・・・・、言わなくていい。言葉じゃなくていいから・・・・・。少しでも寂しい気持ちがあるなら・・・、キスして教えーーー」
言い切るより早く彼の唇を塞いだ。
私も馬鹿・・・。
こんなことをしたら・・・また彼の私への気持ちが強まるだけなのに。
そう理屈は並べても私はいつだって本能に忠実なのだ。



