でもまぁ・・・行きたくはないだろうな。
思わずそう彼と同調するような意見を浮上させてもどうにもならない事なのだ。
「・・・車を下に用意してあります。そろそろ参りましょう」
「・・はぁ・・・気が重い。絶対に食べる物の味感じないよ・・・」
「それは勿体ない。【生粋】に決まったのでしょう?せっかくですからしっかり味わって、お口に合うようでしたらいつか連れて行ってくださいませんか?」
「・・・・・千麻ちゃんを?」
「はい」
「千麻ちゃんと?」
「はい」
「それって・・・」
「デート・・・でしょうか?」
「・・・・・じゃあ、下調べに行ってきます」
単純・・・。
【デート】という言葉の浮上によって彼の纏っていた気重さが軽減したのが分かった。
物は考え様。
目的を別の物にすり替えれば多少の気分の変化。
何とか行く方向に意思を定めてくれた彼がゆっくりと扉に向かって歩き出すのを捉え、少し足早に彼の前を行き扉に手をかけた。
グッと扉を押し始めた瞬間、後ろから伸びた手がドアを引き戻し再び密室の完成。
何をしているのかと怪訝な表情で振り返れば、見下ろすグリーンアイの凄艶さに一瞬飲まれた。
「・・・・・何・・を・・しているのですか?」
「ん・・・なんとなく最後の無駄な抵抗です」
「無駄だと理解はしているんですね?」
「うん、・・・だって、行きたくないけど行くもん・・・俺」
「そうですね。・・・・それがお仕事ですから」
「うん・・・だから・・・・・ごめんね、千麻ちゃん・・・・」
不意に落とされた謝罪の言葉。
心底申し訳なさそうに眉尻下げて微笑み言われた言葉に思わず感情が揺らぐ。
ざわざわとこみ上げ締め付けるような感覚。
思わず手を伸ばして縋りたいような。
掴んで引き寄せて手放したくないような。
ああ・・・そうか・・・・。
寂しいのか・・・・私・・・・。
彼の純粋な謝罪に誤魔化せない感情が引き上げられた。
言いようのない心細さはこの後の1人の時間を予想してか・・・。
よりにもよって今日・・・・。
「・・・・・行くの・・・・・やめますか?」
響いた声に自分で驚き、目の前のグリーンアイも驚きに揺れた。
何て馬鹿らしく、実現不可能な確認。



