確かにその言葉は否めない。
むしろ言われたように正論をオブラードに包むことなくぶつけて彼を傷つけたのは数時間前。
見事黙った私に苦笑いを浮かべていた姿が壁に寄りかかりふぅっと軽く息を吐いた。
「・・・茜が嫌い?」
「・・・・いえ、呆れる点は多くとも嫌悪や拒絶感は抱いてません」
「でも・・・1年経ったら離婚するの?」
「それが契約です」
「じゃあ、・・・・何で結婚したの?」
「・・・・」
「またいつもの茜の我儘だ。しかも今回は千麻ちゃんの人生にも関わる我儘。下手したら汚点じゃない?バツイチって」
「それは・・・」
ああ、痛い。
本当に突っ込んでほしくない所に容赦なく切りこんでくる人だ。
困ったことに彼の様に言い包める隙が無いのがこの義父。
『何でか?』そう問われると酷く困ってしまう。
私でも何故こんな非常識な要望を呑んだのかと常日頃考えてしまうほど。
『ねぇ、俺と結婚してくれない?』
ヘラっと笑って言った絶句してしまう様な我儘の言葉に、あの瞬間何故か苦しくなったのだ。
笑顔と言葉と本心が全てアンバランスで、その瞬間にその手を取らなければ糸の切れたビーズの様にバラバラと壊れてしまいそうで。
働いたのは母性の様な物だったのか。
支えたくなったんだ。
何とか・・・、失った存在の穴埋めをして心が落ち着くまで。
『1年契約でよければ』
それが色気も無い私の返答。
なのにそんな返答でも彼は安堵したように頬笑み私を求めたんだ。
『傍にいて・・・』
滅多に見せない弱気な姿。
狡いのはやはり彼の方なのだ。
だって、私があの時手を取らなければきっとみるみる弱っていったのだろうから。
そしてそんな姿をむざむざ傍観するほど私も情が無いわけじゃない。
むしろ・・・、誰よりも私が適任だった。
理解しきった私だから全ての力を私に預け倒れ込むことが出来たんだと思う。
愛なんて知らない。
だから私達の結婚は
普通の愛溢れる恋人達の終着点とは違うのだ。



