そう、溜め息でしか反応できない。
彼だってそこそこ重役として暗黙的なマナーは心得ている。
一度ならまだ言い訳が立つ、それが二度になれば角が立つ。
相手が卑怯にも接待という会社の繋がり利用して接触を望んできているのが運のつき。
さすがにそれがマナー違反で非常識だろうと、仕事の一環として彼は応えるのがここでの最善策だと言えるのだ。
頭を抱えて床を見つめる彼に、さすがに苦笑いで腕を組み見下ろす義父。
そんな義父を捉えてからゆっくり隣で項垂れている彼に視線移せば、再度深いため息を響かせた姿が視線だけちらりと私に向けた。
ああ、問いたいことは分かります。
『どうしよう?』
そんな迷いでしょう?
そしてあなたは私の返事も概ね予測してその投げかけをされているのでしょうとも。
「お仕事です。いってらっしゃいませ」
「はい、・・・予想通りの返事ありがとうございます。ご理解ある奥様・・・」
だって、聞く方も悪い。
私は妻である前に秘書であって。
この勤務中である時間は自分の私生活より仕事の利益を重点に置くべき事なのだ。
でもそれは彼も理解している。
私に嫌味な言葉を告げてから不機嫌な顔でその身を起して三度目の溜め息。
そして一瞬の沈黙の後にぽつりと、
「ごめん。・・・・わかってます」
私の立場を理解して、なのに弾かずにいられなかった嫌味に対しての謝罪。
少し・・・・成長し余裕の出来た姿。
つまりこの流れは・・・。
「・・・何時?父さん」
そう、彼は応じてこの仕組まれたような接待を受けるという事。
まぁ、仕事ですから。
嫌なことも受けねばならないことがあるという経験。
ああ、でも・・・。
今日は一人の夕飯か・・・・・よりによって。
やはり色々な面で今日はアンラッキーDAYなのかもしれないと頭で思い、目の前で気乗りしない表情の彼と義父のやり取りを見つめる。
場所と時間とをやる気なく組んでいる会話を聞き入れ、こちらも落ちがないように記入してスケジュールに追加した。
そして予定が一人の夜に切り替わった今夕飯に何を食べようかと思案し始めたタイミング。
不意に頭の上にポンと置かれた何かに、目の前に立った人を見上げて疑問を映す。
義父である人を。



