夫婦ですが何か?



一体いつからいて、いつからこの不誠実な時間を見られていたのか。


さすがに叱責されるような場面だと僅かばかりに緊張抱きながら体を社長である彼の方へ向けていく。


含みある微笑み浮かべたまま部屋を横切り私たちに歩み寄る姿は隣に立つ彼の未来予想図にも見えて仕方ない。


そしてゆっくりに感じていた歩みも目前に迫ると動きを止めた。


笑ってはいるけれどいつも鋭いグリーンアイが眼鏡越しに私と彼を威圧した。


そんなタイミング。



「父さん・・・、」


「ん?」


「早く可愛い孫抱きたいでしょ?」


「勿論、でも、その心は?」


「可愛い孫作るためにもめっちゃ高級な天然物の鰻が食べたいんだけど・・・・奢ってよ」




さすがに『空気を読め!』と言いたくなる。


唖然としてその発言を聞き取って、直後に呆れて頭を抱えた。


全くと言っていいほど今さっきの自分たちのモラルに欠けた出来事を無かったことにして、普通に息子としておねだりし始めた夫に色々物申したい。


そして、何だその前振り。


ああ、でも・・・・食べたいな天然物・・・。



「茜・・・・」



自分でも一瞬つられて鰻に思考移れば、瞬時に耳に響いた社長の声で現実に戻る。


その言い方が何か言いたげに眉根寄せての表情な物だから、今回こそはおふざけなしに注意を下されると身構えた。


でも・・・馬鹿ね千麻。


この【親子】だって忘れてた。




「情けないなぁ。すでにスタミナ切れ?」


「まぁ、我らが有能なる千麻ちゃんは夜も有能過ぎたもので」


「それはそれは・・・是非とも夜にお借りしたいくらいだな」



「大概にしないと本気で訴えますよ?」




さすがにプライバシーゼロのセクハラな会話に怒気孕んで本気で携帯を手に訴えを起こそうかと法律事務所の番号を探す。


だけどもすぐに似たような苦笑いで私の背後から腕を巻きつけ宥めるように抑え込む彼と、私の手からするりと携帯を抜き取る義父の姿。



「じょ、冗談じゃないかハニー」


「つい可愛い孫の可能性に浮れちゃって」



だから・・・・産む気なんてまださらさらないっつーの。


心でそんな不満を漏らし、表面ではフンと鼻を鳴らして張り付いていた彼を振りほどいた。


とりあえず私の暴走は食い止めたと胸撫で下ろした様な彼が、不意に思い出したように父である社長に意識を戻す。