「『それなり』?」
示したのは2か所にはっきり色濃く浮かぶ紅い痣。
ああ、コレか。とウンザリ顔でウンウンと頷くと羞恥するでもなく言葉を返す。
「これは・・・家を出る際にジャレ付いてきた黒豹の子に噛みつかれました」
「ふはっ、朝っ!?家でる時に盛っちゃった?あいつ」
「社長・・・露骨で下品です。そして残念ながら的外れなお言葉です」
「的外れ・・・・・・・・・、もしかしてとは思うけどさ・・・」
「はい、」
「新婚初夜に本当にベッドを共にしただけ・・・とか・・・」
無いよねぇ?と言いたげな頬笑みで確認してくる【まさか】に、肯定するようにぶれることなくグリーンアイを見つめ上げる。
それが何か?
そんな気迫で見つめていれば、さすがに苦笑いになった社長がフッと視線を外し遠くを見つめる。
「茜・・・不憫な・・・」
「変な同情をしないでください」
「千麻ちゃん、俺可愛い孫が抱きたい」
「いきなり何言いだしてるんですか?」
「心配しなくても俺の子だし多分あいつ上手いよ?」
「そんな心配1ミリもしてませんけど・・・。そろそろ本気でセクハラで訴えていいですか?」
永遠に続きそうな舅のセクハラに頭を抱え始めれば、それが狙いだったかのようにクスクスと笑う声。
ムッとしながら顔を上げれば、『ごめんごめん』と軽い謝罪で頭を撫でられた。
ああ、本当に親子。
この性質の悪さと言ったら。
なのに仕事に関してはどちらも実力者であるから完全なる人格否定が出来ずにいる。
そしていくら挑んでも勝てる相手でない事も理解しているから、ただ自分の中に不満を留め静かに消化するしかない。
もう充分だと思ったと同時に空腹な自分に気がつき、腕時計を確認すると社長のお遊びに終止符を告げる。
「お昼です」
「ん、茜は一緒じゃないの?」
「伝言も無く勝手にいなくなりました」
「へぇ、早くも夫婦喧嘩?あんまり苛めないでやってよね?」
「なんで私が悪者なんですか?」
「いや、何か正論をキツイ言葉で言いきったんじゃないかな。って、千麻ちゃんの事だし?」
違う?
まるで全て見知っていたように確信ある頬笑みを向けてくるから敵わない。
見事グッと唇を噛んで口を閉ざすと、『やっぱり』と言いたげな苦笑い。



