視線を彼とは逆の室内の景観に向け、横たわったまま彼の言葉に疑問と嘲笑。


それでもトンッと私の二の腕に顎を乗せてきた瞬間には小さく心臓が跳ねる。


そして恐いもの見たさ・・・ではなく【可愛い】もの見たさ。


こういう時の彼は酷く愛らしく愛でたくなるような切なげな顔をしているのだ。


それを示すような声音。



「・・・・千麻ちゃん、」


「・・・・・」


「ねぇ・・・無視しないで?」


「・・・・・」



見たい心を我慢、応えたい衝動を堪える、そして無言を貫き目蓋を下ろしていれば。



「・・・・・・・俺だって・・・反撃するよ?」



さすがにそのトーン落ちた声には反応して目蓋を開け予防線張ろうとその身を起こす。


でも一瞬の遅れ。


起こしかけた直後にうつ伏せにベッドに縫い付けられて、驚く間もなく首の後ろに噛みつかれゾクリと震える。


コレは少しまずい展開。


だって絶対・・・。



「・・っ・・・・・・」


「へぇ・・・、珍しく耐えてる?」



予想済みだったから。


それでもギリギリでその場繕いの耐久なんて案外脆い。


形勢逆転だと言葉を発する振動を伝えながら首筋から背中を滑る彼の唇と腰を悪戯になぞる指先。


ギュッと枕を掴んで逃そうとしてもその効力は微々たるものだ。


今にも零れてしまいそうな声を必死に口内に留めて堪えていたのにいとも簡単に突き崩す彼。



「・・・っ・・・あっ・・・」


「・・・・誘い方が狡いから・・・・乗り方も狡くなるんだよ千麻ちゃん・・・」



はい・・・・。


コレは・・・あなたの勝ち。


負けたくないと必死にその声や反応を堪えていたのに、半ば強引に動いた彼が確認もなく重なってきた感覚に敗戦。


悔しいと思うくせに、気持ちいいと感じる私も大概愚かだ。



「・・・・・・本当に、・・この3ラウンドで終わりにしようね?」



少し困った様な彼の声音に思わず口の端を上げての苦笑い。


うつ伏せのこの状態では彼からは表情は見られないと安堵しつつ、それでも彼はこの表情さえ予想済みなんだろう。


今私が手に取るように彼の表情を読めるように。



「・・・・茜・・・」



全てに対しての返事や懇願含めの名前の響き。


口から零せばスッと後ろから耳を甘噛みした彼が小さく囁く。



「溺れて、・・・浸って・・・」






じゃあ・・・、そのまま壊してね・・・ダーリン。


とは、言うまでもなく・・・。


彼の欲に沈められた。





ああ・・・腹が立つ・・・。




負かされた悔しさより上回る、



体の相性の良さに。