彼女らしい例え話と理屈。


それを無感情のような表情でさらりと言ってのけて、確かに分け合った時間をただの欲のみの物だと告げてくる。


快楽だけ?


僅かも・・・・感情はないのだろうか?





だとしたら・・・一方通行の、俺だけが感情を抱いていた行為。





複雑で・・・虚しい。




急に冷水かけられたような感覚で、動揺悟られぬように視線を外に移していく。


さっきまであった緊張感や感傷的な物も夜風が吹くたび攫われて消えていく。


徐々に残るのはもどかしく苦い恋心。


カランと彼女の手のグラスから溶けた氷が音を立てた。


そんな瞬間。



「・・・・でも、私は・・・社交的ではないですから」


「・・・・・えっ?」


「・・・・・・・知り合いであっても簡単に回し飲みするような人間でもないし、気を許さなければ些細な接触でさえ嫌悪する」


「・・・・・」


「・・・・・・きっと・・・あなたはご存知でしょうけど」



ずっと横顔を見せていた彼女が確かめるように隣に立つ俺に視線を移す。


分かっているでしょう?


そんな表情で。


狡い・・・・。


駆け引きのような間とタイミング。


一度落として・・・、


それが最大に効果を発揮するように持ち上げて・・・・。





逆上せる・・・。






「・・・・・顔・・・赤いわよ?ダーリン」


「・・・・・・酔いが・・・回っただけだよ・・・・」






見え見えの嘘。


アルコールなんて一滴も口にしていない。


それを当然理解している彼女がクスリと小さく笑うと、逃がすはずなくそれを指摘した。




「嘘つき・・・・私が全部飲んだ・・・」


「うん・・・・・酔ったのは・・・・・千麻ちゃんにだもん」



必然。


言葉を交わし、一瞬眼でも会話するように見つめるとすぐにどちらともなくゆっくりと唇を重ねた。


触れた瞬間に冷たいと感じた彼女の唇。


混じる飲んでいた酒の甘味。


ソフトにゆっくり啄んで、一通り感触を確かめあうとスッと離れる。




「で?・・・・・ご不満は?」




その言葉に困ったように笑って噴き出して、彼女をゆっくり引き寄せ抱きしめる。


細くて華奢で折れてしまいそうで。


でも・・・・強く抱きしめていたい。