『ねぇ、見た?』
『見た見た、水城さんの首でしょ?』
『あからさまだよねぇ。恥ずかしくないのかなぁ?普通隠すでしょ?』
『フッ、あからさまな優越感と見せつけじゃなくて?自分が婚約者よりも選ばれたっていう』
『うわっ、醜悪~。馬鹿みたいだよねぇ、そんなの単なる横取り女だって自分で言ってるような物なのに』
ああ、よくあるよくある。
事情も知らない女子社員達のストレス解消の肥やし。
訳知り顔である事ない事をネタにして、さもそれが正解の様に語りネタの対象を悪に仕立て上げていくんだ。
所要で別階に行っていた体を元のフロアに戻し、そろそろお昼だと腕時計を確認している所だった。
給湯室。
流行りのメイクや髪形に彩った秘書課の女子会。
女の恐い所はいつだってその場にいない物が対象なんだから。
例えば、今こんな風に仲良く話している1人が席を外せば、その子の悪口大会も始まるという。
なんていい加減であやふやな関係。
それを分かっているから当初から煌びやかな女子と関わる気はなく、同調するでもなくただ仕事に集中してきた私。
彼女たちからすれば地味で目立たない存在。
なのに彼の専属である事に日々微々たる嫉妬を抱いていたわけで。
そんな私が彼の妻の座に収まったのだからこうして愚痴の一つでも言わなきゃ収まらないのだろう。
そう納得して特に意見するでもなくその場所を通過し部屋に戻る。
エレベーターで気まずい空気になっても感謝したのは仕事の存在。
仕事を通しての会話ではただいつも通りに時間を過ごし、余計な会話も無くお互いの仕事に集中していた午前中。
しかし、さすがにお昼という仕事から解放される時間。
・・・・さて、どうしたものか。
そもそもまだ彼は気にしているだろうか?
そんな謎かけを自分にし、すぐに『絶対にしている』と答えを出すと思わずため息。
そう、普段あんなに無茶苦茶で陽気で悪戯っぽいくせに、その裏で酷く傷つきやすくへこむと引きずるのだ。
気が重い。
そうは思っても歩けば辿りつく彼の部屋。
礼儀としてノックし『戻りました』と声をかけ中に入れば、人気のないクリアな視界に一瞬不動になった。



